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21話:人間の街へ

今の魔族…名前ももう覚えていないが。

身体のコントロールを奪われ、断末魔の叫びすら上げられず…いや、どちらにせよ一瞬でバラバラになってしまったから、声は出なかったかもしれないが…実に哀れだ。

「今のが、水魔法…ですか!?まさか爆発するとは思ってなかったですよ、事前に警告しておいてくれてもいいじゃないですか?」

「ごめん、そこまで気が回らなかったよ…。」

「なんで、水魔法で爆発が起きるんですか…。もう、本当にびっくりしましたよ…。」

「あぁ、あれは、【水爆弾】。水を一旦2つの物質に分解して、再度水に戻す時に発生するエネルギーを使った攻撃なんだ。準備に時間がかかるし、あのサイズだと敵の至近距離で起爆させないと大したダメージにはならない…でも、当たれば強力な攻撃なんだ。頼まれていた『当たれば必殺』にはピッタリな魔法だっただろう?」

あぁ、水素爆発…か。この世界でも水は酸素と水素、もしくはそれに近いもので出来ているようだ。まさかそれを利用した魔法があるとは思わなかった。

「なるほど…。」

「2人共、大丈夫か?すまん、何も出来ず…。」

グラムが滑空してきて、私達の前に着地した。

「いいんだよ、おじさんみたいな動物型の魔物に、火属性は相性最悪だからね。むしろ、僕が先陣を切って戦うべきだったんだけど…」

「知能が低いとはいえ、相手は確実に格上でした。スーさんを中心に戦っていたら、私は助けになれなかったと思うので…これが正解だったはず、です。」

実際、火にそれなりの耐性のあるこの身体でも、あの魔族の攻撃は手痛かった。一歩間違えていれば…。

「それにしても…敵の内部に入ってコントロールを奪う、か。僕にも出来たらいいのになぁ。嫉妬しちゃうよ。」

「ふふ、これは気体の特権です。私にしか出来ませんよ。それより…」

「何だ?」

「この森が狙われた理由が、分かりました。ここは、火の魔王の城と、私達の闇の魔王城の間にありますよね。火の魔王は、ダーク様を始末しようとしているようなんです。」

あの魔族に【寄生】した時に、思考や記憶は全て盗んでおいたのだ。

「何だと?あいつを…」

「その為に、まず、攻め込みやすいよう、間にあるこの森を破壊しようという算段だったようです。」

火の魔王とすぐに事を構える気は無かったのだが…相手がその気なら私も考えを改めないといけないかもしれない。

「くそっ…火の魔王…どれだけ僕の大切なものを破壊すれば気が済むんだ…!」

スーは過去に主人を火の魔族に殺されている。これが『二度目』だ。

「感情的になっても、何も良い事はありませんよ…。」

咄嗟にフォローを入れようとしたが、少し間違えたかもしれない。

「…そうだな、ぐっ…僕はもう、帰るよ…。」

スーは私に背を向け、拠点の方へ歩いていった。


私は、破壊された土地を眺める。さっきの魔族は粉々になってしまったので、吸収不可だ。

軽く【豪雨】で土地に水を含ませる。

…そして、【ダークヒール】を放つ。この未知の魔法は、効力の範囲も未知だ。もしかしたら、この地の命も再生してくれるかもしれない。

そう考えながら、私は荒れ地を後にした。




「スーさん…あ。」

夜が明けた頃、部屋の扉を開けると、彼は、器型のオブジェクトの上でほぼ液体と化していた。

こちらには気付いていない様子だ。私はそっと部屋に入り、扉を静かに閉める。そして、部屋の隅に置かれた椅子に座る。

【スー Lv.267(269)】

魔族に止めを刺したのは彼だ。そのせいか、かなりLvが上がっている。緑の勇士のリーダーであるグラムのLvを上回っている。

彼の無防備な姿をじっと見つめながら、私は考え事をする。人間の街へ行ったら…まずは、この世界の人間がどのようなものなのか見たい。本で読んではいるが、百聞は一見に如かずだ。

その後は、まだ知らない知識を蓄える為に、本を探したりする。知識と経験が無ければ力があっても活かせない。

そして、やはり冒険者になろうと思う。新参者でも信用を得やすいというのはかなり大きい。それに、最終的な()()も見つかった。

頭の中を整理して、立ち上がる。そろそろ彼を起こしてあげよう。

「スーさん?朝ですよ…」

彼は驚いたのか、液面が猛烈に波打った。数秒の後、彼は人型形態になり、こちらを見る。

「い、いつからそこに居たんだよ…?」

「夜が明けるくらいからですよ。」

「居たなら言ってくれよ!」

「一応、部屋に入る時に言いましたよ。スーさんがとろけていたので、暫く放っておいてあげたんですよ。無防備な姿も可愛かったですよ。」

「~っ!」

彼は両手で顔を隠す。恥じているのだろうか?

「で…そうですね、今日は、昨日の話の続きをしようと思ったので。出来るだけ早めに、人間の街へ行きたいので。」

「…行くか?今日?」

彼は指の間からこちらを見ながら衝撃発言をする。

「今日!?行けるんですか?」

「もう殆ど準備は出来ているだろう?あとは資金の調達くらいだけど、そこら辺で害獣を狩っていけば報奨金が入るよ。その他の事は、街についてから考えられる。あとは…そうだな、出生の設定でも考えておかなきゃダメか。」

「出生…ですか。私、そういう事を考えるのは結構苦手なんですよね…。」

「出生地は不明で良いよ。こういうのはどうだ?『物心ついた時から、この森で暮らしていた。森に棄てられて、死にかけていた所を、高位の魔物に拾われて育てられたらしい』…『人間の世界を知るために、育ての親の元を離れて街へ来た』…みたいな。」

「そんな誰でも騙れるような経歴で疑われませんか…?」

「疑われても大抵は大丈夫だよ。悪意を持っているなら兎も角、そうでない者は基本的には来る者拒まずの街だから。」

「そうなんですね…?それで、セキュリティは大丈夫なものなんですかね…?」

「あまりにも怪しいと、『判定官』の所へ連れていかれるけど、悪意が無ければ大丈夫だ。逆に、一定以上の悪意を持っていると、バレてしまう。魔族判定と悪意判定、2つの判定を使って、敵を排除しているから、治安も結構いいんだ。」

「成程…。でも、私って魔王の手下じゃないですか。それで悪意と判定される事は…?」

「無いね。人間に危害を加えようとしているなら、悪意判定だけど…目指しているのは平和なんだから、なにも悪じゃないじゃないか。」

「つまり、悪とは、人間にとっての善悪で判定するわけですね!理解しました。」

「そういう事だな。だから大丈夫だ。最悪、おじさんに親役をやってもらえばいいさ。そこまですれば、誰だって信じてくれるだろう。」

「了解しました。…あっ、大事な事を訊いていませんでしたね…その人間の街はどこにあるんですか?」

「僕の分身体は持ってるよね?それ経由で案内してあげるよ。」

「じゃあ、今すぐ出発しても?」

「いいよ。」

私は再び分身体を構築した。ステータスを確認…

【フウカ Lv.128(159)】

もしかしたら他に分身体を作るかもしれないので、Lv.30分だけ余裕を残しておいた。

「では、行ってきます!」

第21話です。

とろけスライム、恥じスライム、可愛い一面を見る回でした。

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