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20話:火の侵略

「急降下します、気を付けて!」

「ああ、分かった…」

スーの声は怒りに震えている。大切な森を破壊されたのだから無理はない。

私は勢いよく着地し、辺りを見回す。そこには、先に到着していたらしいグラムと、見慣れない姿の、人型の…

「…魔族っ…しかも火の魔王の所の…」

スーがそう呟いた事で私も気付いた。あれは魔族だ。魔族と一括りに言っても見た目や性質には大きく差異があるから、すぐには分からなかった。

「気を付けろ、奴は相当な手練れのようだ…」


暫くの(のち)、私は、その魔族の方に歩み寄る。

「森を破壊して…何が目的です?」

「目的~?そんなもの、どうでもいいだろうが。お前、何だ?」

「…どうでも良くないですよ。皆さんが必死に守っているこの森を、一方的に破壊するなんて…それ相応の報いを受ける覚悟はあるのでしょうか?」

「覚悟?お前こそ、俺の、いや、フレア様の邪魔をしたら、どうなるか分かってるんだろうな~?」

「折角会話が出来るかと思ったのに、話が通じないのでは、意味はありませんね。」

名前から察するに、フレアというのは恐らく、この魔族のボスである火の魔王の名前だろう。この魔族が火の魔王の差し金である事は確実だ。

【ヒート Lv.320(320)】

強いが、勝てない敵では無い。相手はさほど頭も良く無さそうだ。

「貴方の力では、絶対に私には勝てませんよ。その魔王とやらでもね…」

「お前、今自分がなんて言ったか分かってるんだろうな…?」

取り敢えず分かりやすく煽ってみたが、効果は覿面(てきめん)のようだ。行動原理が単純な奴は思い通りに動いてくれて助かる。

「もう一度言いましょうか?貴方は、弱いので、私には勝てない、そう言ったんですよ。」

「お前、相当死にたいようだな。いいだろう、圧倒的な力の差を見せてやる。」

「やれるものならやってみて下さい?ほら…」

私は両手を上げ、防御を完全に捨てた。挑発を続ける。

「後悔しても遅いぞ!!」

敵は拳に炎を纏わせ、殴りかかって来る。

「喰らえ!」

そのまま、ノーガードの私の身体に、打撃が入る。勿論、打撃は受け流すが、炎によりダメージを喰らう。

だが、全ては計画通りだ。私は最近のLvアップで習得した新スキルを起動する。

寄生(パラサイト)】…!

この技は、相手の体内に粒子を潜り込ませ、寄生するもの。なので、わざと一撃受けて、気付かれないように飛散した粒子を忍び込ませた。

「私をそのような攻撃で倒せるとは思わない事ですね。あぁ、それ以上の攻撃手段が無いんですか?お気の毒ですね…」

「何かおかしいと思ったら、お前、流体生物か…!まぁいい、俺が物理攻撃しか出来ないと思ったら大間違いだぜ…?」

「果たして貴方の貧弱な魔力で、私に有効打を与える事が出来るのでしょうか…?否、無理でしょうね…。」

【寄生】の弱点として、即効性が無い事、早期に察知されると対処されてしまう可能性がある事、この2つが挙げられる。そのため、敵の思考力を落とすことを怠ってはならない。今は時間稼ぎの時だ。

「調子に乗りやがって。これで終わらせてやるよ!」

敵は両手を頭上に掲げ、火球を生成し、投げつけて来た。

避ける事も可能だが、背後には森がある。仕方なく正面から受ける。

熱い。HPが5%程削られる。

「まだまだぁ!」

敵は連続してこちらに火球を投げて来る。最初のものより威力は低いが、数が多い。回復する暇も無く、次々と火球を喰らう。この身体にそれなりの耐火性があってよかった。そうでなければ、今頃はもう戦闘不能に陥っていただろう。

この、耐え凌ぐ時間ももうすぐ終わる。

「う…何だ…?」

やっと【寄生】が効いてきたようだ。敵の動きが鈍る。こうなってはもう対処出来ない筈だ。

私は【癒しの闇】で自己再生し、【寄生】を基に敵の身体のコントロールを奪う。後方からスーが歩み寄って来る。

「頼まれてた、特大の水魔法、準備はもう出来てるぞ。」

「ありがとうございます。」

戦闘を開始する前に、スーに、『当たりさえすればこの敵を倒せそうな魔法』の準備を依頼していた。そう、相手の動きを封じたとして、私には(とど)めを刺す手段が乏しいのだ。

「さて…哀れですね。貴方の力では、絶対に私には勝てませんよ。そう忠告しておいたのに。」

細部まで動作のコントロールを奪っているので、もう自分の意思で喋る事すら出来ない、哀れな魔族。【寄生】により思考も読める。死への恐怖を感じているようだ。

「皆の大事な森を、こんなに破壊しておいて、殺される覚悟も出来ていなかったんですか?…報いを受けてもらいますよ。スーさん、あとはお願いします。」

「…この奥義で苦しむ間もなく葬ってやる。感謝しろ。」

スーは魔族の喉の奥に小さな球のようなものを押し込む。3秒ほど後…

「うわっ!?」

私は驚いて声を上げてしまった。その魔族の身体は粉々に砕け散ったのだ。


第20話です。

モブ敵は1話で退場させました。さようなら。無慈悲。

投稿が滞っていてすみません。「七色の光」の執筆が進んでいないのもありますが、投稿する作業がめんどくさいです。

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