6.システム(?)がくれた情報
(は?……な、何だ?またか!?やっぱり誰か居るのか?……うっ!)
アザゼルはまた頭に響いた声に戸惑い辺りを見回そうとしたが、その前に急に頭が痛くなり小さな羽になった腕で頭を抑える。その瞬間あらゆる記憶が文字として頭の中に流れ込んできた。
——小守康平、32歳、男性、独身、一般家庭生まれ、元ブラック企業の営業マン、学生時代は神話にハマっていた時期アリ、趣味はネトゲとネットサーフィンとなろう系小説を読み漁る、引きこもり体質、死因はインフルなのに無理に出社しようとした際足を滑らせ階段から転落し頚椎骨折により即死…
ついさっきまで思い出せなかった自分に関する情報が一気に流れてきた事に戸惑いつつ、死因を聞いた辺りで直前の記憶を思い出す。
(……そうだ、俺。インフルになって会社に休みの電話をしたら上司に怒られて……。それで無理して出社しようと家を出たはいいけど、そのままアパートの階段から足を滑らせて……。そうか、俺そのまま死んじまったんだな。……でも何でそれでコウモリに?)
——それはあなたが死の直前、インフルになんかならなければと望んだからです……
(なるほど……、ってだから何でコウモリなんだよ?それとさっきからお前は何なんだよ!)
一瞬納得しかけた康平だったが、そこからのコウモリ転生にはまだ理解出来なくて、謎の声に心の中で盛大にツッコミを入れる。
——それはウイルスに強い身体とあなたの引きこもり体質がコウモリとマッチしたからです……
謎の声はそう言いながら、オオコウモリの生態を情報として頭に流してくる。
——オオコウモリ、血は吸わず果実が大好物、身体は約20cm程、樹洞や樹上や洞窟に住んでおり視覚と聴覚に優れている、ウイルスに強く体内に何種類ものウイルスと共存している……
ウィキペディアみたいなオオコウモリの情報の羅列に、康平はへーと頷きながら聞いていた。
(オオコウモリってそんな感じなんだ……、って普通にウィキ読んでる気分になってた。……まあ、何か腹立つけど確かに引きこもり体質の俺には合ってるかもな、名前もなんか似てるし)
一応謎の声からの情報は確かに役に立ったので、康平は渋々といった様子で納得する。
——お役に立てたようで何よりです。他にも知りたい情報がありましたら気軽にお問い合わせ下さい……
とりあえず謎の声からの情報は今はこれが全てらしく、ようやく頭痛も治まる。
(……じゃあお前は何者なんだよ?)
やっと状況を理解した康平は今一番の謎である、謎の声に聞いてみる。
——私はあなたのサポート役といった立ち位置となっております。辞書のようなものだと思って頂いて差支えはないかと思います……
謎の声のその説明に、康平はまあなろう系によくあるやつか、本当にあるんだなと変に納得する。
「……アザゼルさん?大丈夫ですか?私の話聞いてました?」
その時康平はアルメリークに突然話しかけられ、ハッとした顔でそういえばこいつが居たんだったと思いながらアルメリークに向き直る。
「……あ、すまん。ちょっと色々あって聞いてなかった。何か言ってたのか?」
アルメリークは康平のその返答に特に気を悪くした様子もなく、恐らく先程説明してたであろう内容をもう一度康平に説明してくれた。
「ではもう一度説明しますね。アザゼルさんは今レベルが3なので、もう少しレベルを上げた方がいいかなって思いまして。……あ、もちろんアザゼルさんをバカにしてるとかそういうのではなくてですね!ここは結構冒険者パーティが来るダンジョンですので、ご自分の身はご自分で守れた方がいいと思いますので!……私はそのぅ、先程説明した通りなので……」
康平はアルメリークの申し訳なさそうな表情で話すその説明を聞きながら、確かにレベル上げはなろう系の醍醐味だよななどと考えうんうんと頷く。
「確かにダンジョンボスの使い魔になったからには、レベルはある程度上げとかないといけないよな。お前、なんかレベルめっちゃ高かった気がするし」
素直に納得してくれた康平の言葉に安心したように顔をほころばせながら、アルメリークは私はレベルが高いだけですよと謙遜すると、広間の方を指差した。
「じゃあさっそくレベル上げに行きましょうか」




