5.ステータス確認
突然頭に響いてきた謎の声に、男は戸惑い慌てて辺りをキョロキョロと見回す。
「な、何だ?今の……。お前何か聞こえたか?」
自分たち以外は誰も居ないのを確認すると、男は目の前のヴァンパイアに向き直り聞いてみる。しかしヴァンパイアは半透明な何かを見ながら何やら興奮しており、男の言葉など聞いていなかった。
「見てください、ここ、ここ!ほら、ちゃんと契約出来てますよ!……というか契約って握手で出来るものなんですねぇ」
ヴァンパイアは嬉しそうに半透明なボードのようなものを指差しながら、男にも見るように促す。
それは薄い水色の文字で何やら色々と書かれており、とりあえず男は上から順に確認する。
——名前 アルメリーク・フォン・ナイトレイ
種族 ヴァンパイア属 Lv.568 使い魔 オオコウモリ……
そのボードのようなものには、目の前のヴァンパイアのステータスが書かれているようで、男はふむふむと頷きながら読み進めていき、使い魔と書かれている所で目を止める。
(俺はオオコウモリっていう種類なのか。……ていうか眷属じゃなくて使い魔なんだな。……もしかしてこれがさっき謎の声が言ってたステータスボードっていうやつか?だとしたら俺にも開けるのか……)
未だに興奮冷めやらぬ表情で嬉しそうにステータスボードを見ているヴァンパイア、アルメリークに男は声をかけてみる。
「お前アルメリークっていう名前なんだな。なあ、その……、ステータスボードってやつ?俺にも開けるのかな?」
男のその質問に、アルメリークは特に気にした様子もなく素直に頷き返事をする。
「はい、もちろん見れると思いますよ。頭の中でステータスボードの事を思い浮かべれば出てくると思います」
アルメリークの言葉に男は頷き、頭の中で目の前のステータスボードを参考に、自分も思い浮かべてみる。するとすぐさま同じような薄い水色の文字が書かれているボードが目の前に出現する。
男は心の中でおっ!となりながら、これで自分の事が分かるかもと少しワクワクした気持ちでボードにザッと目を通すが、すぐにその視線は止まる。
——種族 オオコウモリ Lv.3 アルメリーク・フォン・ナイトレイの使い魔……
ここら辺は別に何もおかしくはない。レベルもまあ目覚めたばかりで仕方ない。……しかし問題は名前の部分だ。男はもう一度名前の部分に視線をやる。そこはまるでノイズが走っているかの様に、全く読めない状態になっていた。
「おや、君は名前が無いんですね。……野生だったからかな。私は初めて見ましたが、名前が無いとこういう感じになるんですねぇ。……何か呼ばれたい名前とかありますか?」
いつの間にか男のステータスボードを見ていたアルメリークは、名前の無いステータスボードを見ても特に気にした様子もない。そのアルメリークの様子を見て、男も気にする必要ないのかなと思い直し、自分の名前について考えてみる。
(名前、名前か。……うーん、前の名前は未だに思い出せないしな。まあ、どうせ夢だろうし適当に名乗っても怒られないだろ)
実はまだ長くてリアルな夢だと思っている男は、どうせならかっこいい名前にしようと、あれやこれやと色々と思考を巡らす。
「そうだな、よし、じゃあ俺の事はアザゼルとでも呼んでくれ。……何か響きがかっこいい」
最後の小声は聞き取れなかったのか、アルメリークはうんうんと嬉しそうに頷く。
「分かりました、アザゼルさんですね。これからよろしくお願いします、アザゼルさん」
男改めアザゼルがそう名乗ると、ステータスボードの名前の欄のノイズが忙しなく動いたかと思うと、アザゼルという文字に置き換わる。
どうやらステータスボードは特に操作も必要なく、勝手に連動して変わってくれるようだ。アザゼルはそれに対し便利だなぁという表情でステータスボードを見つめる。
(それにしてもステータスボードなんて、まるで異世界転生ものだな。……ん、そういう言葉は覚えてんだな。どうせならもっと役立つ情報を覚えておきたかったよ)
——かしこまりました、では役立ちそうな情報をピックアップ致します……




