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3.自己紹介

通気口を抜けてそのまま落下していった男は必死に羽ばたくも、全くスピードは落ちずに落下していき、そのまま下にいた冒険者パーティのリーダー格の剣士の無防備な後頭部に勢いよく衝突して、その勢いのまま装飾の影にスライディングしてようやく止まった。


「……痛ってぇえええ!何なんだよ、夢の中なのに痛いって意味わかんねぇよ!」


 男はそのまましばらくプルプルしながらうずくまっていたが、あまりの痛さに耐えきれず大声を上げた……、つもりだったが、それは言葉にはならず代わりに大音量の超音波になっていた。

 しかし本人はそれに気付かず、そのまま空腹と体力が底を尽きそのまま気を失ってしまったのだった。


 ————


 広間には突然気絶したリーダーに戸惑いを隠せない冒険者メンバーと、こっちもよく分かってないがとりあえず表情には出さずにいるヴァンパイアが残される。


「……フ、フハハハハ。どうだ、我を舐めてかかった報いを受け……」


 キィーーーーン……!


 とりあえずよく分からないが自分の手柄にしておこうと喋りだしたヴァンパイアの言葉を遮るように、いきなり頭の中を揺さぶる様な超音波が鳴り響き、たまらずヴァンパイアは耳を塞ぐ。


 少しの間そうしていると、音はすぐに止み辺りは静寂に包まれる。咄嗟に周りを見回すと、未だに気絶しているリーダーの剣士と、超音波をもろに食らい片膝をついたり頭を押さえて必死に耐えている残りの冒険者メンバーと目が合う。


「……何だよ、これ。こんな攻撃してくるなんて、聞いてないぞ……」


「……頭いたい……」

 

 ヴァンパイアの方は自然治癒ですぐに回復したが、冒険者パーティの方はそうはいかないようで、全く回復する様子はなさそうだ。


「どうだ、我の攻撃は。舐めてかかったのが運の尽きだったな。まだ続けるつもりか?」


 とりあえずよく分からないが今は自分が優勢だと悟ったヴァンパイアは、今がチャンスと言わんばかりに自分がやりましたよというような表情でそう言うと、まだ続けるとか言われたらどうしようと内心思いながら、冒険者パーティの反応を待つ。


 少しの間があったが、冒険者パーティは未だに目覚めないリーダーを抱えて、悔しそうな顔をしながら広間を走り去っていった。


 それを見届けたヴァンパイアは、一安心したようにため息を大きくつくと、玉座に深く腰をかける。


「あー、よかった、あのまま続けるとか言われなくて。それにしてもさっきの声は一体なんだったんだ……?」


 ヴァンパイアはそう言いながら少し悩んだが、やがて玉座から立ち上がると、部屋の中を一応見て回る。

 すると装飾の影の方に、黒い物体が転がっているのが見えた。ヴァンパイアはその物体に恐る恐る近付くと、それは気絶した黒いコウモリだった。


「……何でこんな所にコウモリ?誰かの眷属か?いや、生身だから違うな。何でこんな所で普通のコウモリが気絶なんか……」


 そう訝しみながらヴァンパイアはそのコウモリを優しく手のひらに乗せる。


「……めし、くれ……」


 手のひらに乗せた衝撃で、コウモリは一瞬目を開きそう微かに呟くとまた気絶してしまった。


「……めし?飯、か?何かあったかな」


 ヴァンパイアは辺りを見回すが先程まで戦っていたのだから当然だが、食べるものは見当たらなかった。仕方なくヴァンパイアはため息をつきながら、広間の奥に向かいそこに置いてある鏡の前に立つ。その鏡は連絡にも使えるアイテムで、鏡を持っているもの同士で連絡が取り合えるというものだった。


「……すまない、私だ。何か食べ物を持って来てもらえないだろうか」


「かしこまりました、すぐにお持ち致します」


 連絡した相手は屋敷のメイドで、言葉通りすぐにあらゆる食べ物を持ってテレポート用の魔法陣から現れると、食べ物をテーブルに置き、またテレポート用の魔法陣に乗り去っていく。


「……コウモリって何を食べるのか聞けばよかったな」


 あらゆる食べ物を前にヴァンパイアは途方にくれる。ヴァンパイア属はコウモリを眷属にする事はよくあるが、その場合は基本的にモンスター寄りのコウモリなので、主の魔力を貰って具現化している。そのため生身のコウモリの生態に関しては詳しくない。


「……とりあえず本人、本コウモリ?に決めてもらうか」


 そう独りごちながらヴァンパイアは手のひらのコウモリを食べ物の前に持っていき、爪でツンツンとつつくと、その衝撃でうっすらと目を開けたコウモリは食べ物を見た瞬間、ハッとなり真っ直ぐに食べ物の山の中の1つに食らいつく。


 それは艶やかな赤色をした、大粒のベリーだった。目を輝かせ必死にベリーに食らいつくコウモリの姿を、ヴァンパイアは興味深そうにしげしげと見つめる。


 そんなヴァンパイアの視線は気にも止めず、コウモリはしばらく必死にベリーを食べていたが、やがて満腹になったのかやっとヴァンパイアに見られている事に気付き驚いた表情をする。


「ハァ、やっと生き返……、うお、何だお前?……人間、か?それにしては見た目が何か……コスプレか?」


 コウモリはヴァンパイア特有の尖った犬歯に、美しい白銀のウェーブのかかった長髪、透き通るような青白く美しい肌、赤い目、そして貴族の様な衣装を見て戸惑っていた。その様子を見たヴァンパイアは随分人間臭いコウモリだと思い、少し可笑しくなる。


「我を人間などという下等な生物と同列にするな。我は誇り高きヴァンパイア属である」

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