40 作戦
今グラストミアは、木に寄りかかって息を荒らげている。けがが悪化したとかではなく、これは作戦だ。
まさか乗ってくれるとはな。理由をきいたら
『あの犬っころ、反応面白いんだよ』
とのこと。
性格悪いよなホント。嫌いじゃない。
作戦は特にひねったものじゃない。グラストミアの芝居が拝めるだけでも儲けもんだが、その上ケルベロスがあたふたする様を見られるなら、もう万々歳だ。
俺は近くの木に登り、息を潜めている。良いところで仕留めるためだ。
ちゃんとした理由もある。いかにおつむが残念と言えども、クリスタルの力を使う相手をただで仕留められるとは、俺も思っていない。動揺を誘い、楽に終わらせるのも目的の1つだ。本当だよ?
「おらああああ!! 見つけたぞテメェ!!!」
今回のターゲットは……そう、元魔王軍のケルベロスさんです!
見つかるまでに1時間ちょいか、案外早いな。
「ケル……ベロス……」
グラストミアが苦しそうに奴の名を呼ぶ。ノリノリじゃねえか。名演技だわ。
「はっ!! 虫の息だなあグラストミアさんよお! 俺をさんざん馬鹿にしたこと、後悔してんじゃねの?」
「そう……だね……後悔、してるよ……」
始まるぞ……
「こんなことになる前に……君にちゃんと、思いを伝えておけば良かったって…………」
「……は?」
あっぶね、あっっっぶね。吹き出すところだった。
ケルベロスのあの素っ頓狂な顔。グラストミアの少し赤くなった顔。名女優過ぎるだろ。
「最後だから、言うよ……
僕は……君が魔王軍に来た時から、君のことが……」
「ちょっ!! ちょっと待て!!!」
止めたああああああ。根性無しめ。いや、まあわかるけどさ。ちょっとした恐怖だろうな。
「だって、おまっ、え!?」
「最後まで言わせろよ……勇気、出したんだから……」
笑う笑う。ダメだ、耐えろ俺。もうちょっと、もうちょっと泳がせるんだ。
「いや、そ、今までそんな……
そ、そうだ! テメェ俺のことずっとボコボコにしてたじゃねえかよ!! 」
「あれは、その……は、話しかけたかったけど、照れくさくて……」
嘘が苦しい! あとキャラ崩壊がひどい。
これは気づくんじゃねえか……?
「そ、そう……か……」
騙せた……マジかよ……
そろそろ大詰めかな。
「ケルベロス」
「は、はいっ!」
「今度は、ちゃんと聞いて……」
もはやケルベロス顔青いよ。ほっといても倒れそうだなアレ。
「僕は……君のことが……」
「は、え、ちょっ、待っ……」
「ちょっと失礼」
俺参上。ケルベロスの顎を力いっぱい殴る。意識を失ったケルベロスは、その場にぶっ倒れた。
「遅いよ。もうちょっと早くて良かっただろ」
「悪い、面白過ぎて」
手早くクリスタルを奪う。身柄はグラストミアに任せよう。ともあれ、これで
「クリスタル4つ、全部集まった」
「良かったじゃん。
それじゃ、ケルベロスは回収するから」
「おお、協力ありがとな。次会う時は敵ってな」
踵を返し、歩き出す。リリィに良い報告ができる。
ちょっと急ごうかなとか考えていたら、背後から声がかかった。
「あのさ」
「あ? どうした」
「……なんで治療してくれたの」
ん? ああ、背中の傷か……なんでって……
「そりゃ、一時的とは言え味方だったわけだしな。
当然のことだろ……
…………って言いたいところだが、それはまあ建前。
なんかほっとけないっつうか……初めて会った時からさ、なんでかお前が気になっちまって……俺にもよくわかんねえ」
「何それ……僕の告白ごっこの真似?」
「うるせえわ。黙ってとっとと帰れよ」
「はいはい。…………ありがと」
そう呟き、いつぞやの如く黒い穴に消えるグラストミア。さっきのは本当のことだ言わなくていいかとも思ったが、何故かあいつには隠し事をしたくない。
…………やめた。めんどくさいことは考えないようにするのが賢い生き方だ。
さて、リリィと合流したら次に向かうのは
魔界だ。
こんにちは
小夜寝草多と申します。
今までで1番ニコニコしながら書いた話です。
番外編的にショートストーリーをTwitterとかで呟こうかなとか思いました。ショートストーリーというか小ネタになると思いますが。
書いてて楽しい、面白い、心が動くものを書きたいものです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




