38 裏切り者
異常事態。
魔王軍でも実力者である少女。グラストミア。
戦闘の際は凶悪な笑みを浮かべ、自分の背丈ほどもある大剣を振り回す彼女が
「……いてっ、木の根か。ちゃんと教えろよ」
「気配はわかるんじゃねえのかよ……」
「君の気配が大きすぎて他がよくわかんないんだよ」
俺の服を掴んでついて来る。
しかし何だろうな。初めて見た時、なんとなく初対面な気がしなかったんだよなあ。
もっと前から知っていたような……
「いてっ、だから教えろってば」
「めんどくせえなあ……」
かれこれ1時間くらい歩いたのか。
本当に真っ暗だから、目が慣れるも何もあったもんじゃない。
特殊技能持ちじゃなければ活動内容は無理。
暗殺者便利。
くだらない話をしていたら、前方に何か……
「……!」
「むぐっ、急に止ま」
「静かにしろ。
何かいる……いや、ある」
かなり大きいが、人型に見える。横たわっている風に見えるが、もしかして……
「巨人……?」
「ああ、なるほど」
この時間は巨人も寝るんだな。
よく見ると奥にも数人が横になっているのが見える。
静かに近づいていく。
ぴちゃっ
足が液体を踏んだ。
なんだ? こんなところに沼……
…………違う。
「血の……匂い…………」
「クリスタルの試運転か……
あの犬っころ……力を使いこなし始めてる」
寝てるんじゃない。死んでるんだ。
この巨人たちは、もう息絶えている。
しかもクリスタルの力を試す目的で?
救いようのないクズみてえだな……
「まだ死んでからそこまで時間は経ってないね。
きっと近い」
「ああ……」
巨人の死骸を避けて進む。
進んでも進んでも死骸は無くならない。
臭い。死の匂い。
死骸をいくつ見た頃だったか、1つの死骸の上に、俺たちと同じサイズの人間がいるのに気づいた。
「なんだなんだあ? この死体を見ても逃げねえとなると、よっぽどの変人と見えるなあ」
こっちの存在はもう認知されてる。気配を消す必要は無さそうだ。
声から判断するに男。乱暴な言葉に弾んだ声。
「ケルベロス。<鍵>を渡せば命だけは助けてやるけど、どう?」
グラストミアが言葉を投げる。ケルベロス……それで"犬っころ"ね。
「ああ? ……その糞ムカつく態度……テメェ、グラストミアか?」
「そうだよ。昔はよくボコボコにしてやったろ?
楽しい思い出の再現をしたくなければ、早めにクリスタルを渡すのが良いと思うけど」
「うるっせえんだよ!!!
オレはもう昔とは違えんだ!!
今のオレなら、テメェを八つ裂きにすんのも朝飯前ってなあ!!」
旧知の、それもあまり良好ではない間柄みたいだな。ボコボコって……何してんのグラストミア。後輩いびりってやつか?
「しかも、男連れたあテメェも丸くなったなあ!
群れてなきゃオレに勝つ自信も無えってかあ!?」
「<鍵>を使わなきゃ僕に喧嘩も売れないようなガキが何言ってんのか……」
まあ、大体どっちの立場が上かわかった。頭の強さも。可哀想なケルベロス君。
「うううううるっせえんだよおおおおお!!!
殺す! ぜっっってえ殺す!!」
世にも不憫な戦いが幕を開ける。
こんにちは
小夜寝草多と申します。
ゆったりさは少し伝わったかなと思います。
本当に書いていて心休まる時でした。
そしてそして、またも新キャラでございます。
主要キャラクターはこれで何人になったんでしょう。
まだ両手の指で足りますね。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




