25 遭遇
「よ、良かったじゃないですか!
いろんな人と仲良くなれて!
う、羨ましいなあー!」
現在、第3のクリスタルがある場所<死者のカゴ>を目指して移動している。
小雨はまだ降り続き、黒い雲のせいでまだ昼前だというのに辺りは薄暗い。
短い草が茂る中を歩く。
俺は今、リリィにめちゃくちゃ気を遣われている。
あの1件以来、本当にたくさんの人に話しかけられるようになった。
話しかけられること自体は嫌じゃない。
情報も集まるし、人と話すのは好きだ。
だが、
「魔法使えないのをいじってくんのは勘弁だ」
「あ、あはは…………
で、でも良かったです!
最近ユウタさんがよく笑ってるみたいで」
俺そんなに無愛想だったっけな。
まあ、余裕ができたのは確かだ。
「そうかい。
……次のクリスタルって
<死者のカゴ>ってとこにあるんだろ?
物騒な名前だが、どんなとこなんだ?」
「さ、さあ……
私も初めて聞く場所で、ちょっと怖いです……」
相当博識なリリィが知らないときた。
嫌な感じだ。名前からして嫌。
「まあなんとかなる…………あれ、人じゃねえか?」
草のせいで少し見にくいが、10メートル以上先に男が倒れている。
急いで駆け寄り、声をかける。
「おい! おいあんた! 大丈夫か!?」
「ち、治癒魔法を使ってみます!」
リリィが魔法をかけている間に、男は目を覚ました。
「……うっ…………」
「! 聞こえるか! あんたどっから来た?
連れてくからそこまで案内を……」
「ころ……して…………」
リリィの表情が凍りつく。
きっと俺も同じような顔をしてる。
魔法はやめないように指示し、男に声をかける。
「どういうことだ?
痛みならだいぶ引いてきたはずだ。
まだどこか痛むか?」
「いやだ……ころ……せ…………<シオン>にだけは……」
「<シオン>? あ、おい! 目ぇ閉じんな!!
くっそ! リリィ!」
「……だめです、肉体の修復が止まりました」
どうして……見たところ深い傷は無い。
いくつかの擦り傷、それにこれは……歯型……?
「ウグオオオオオアアア!!!」
「なんだ!? 下がれリリィ!」
突然起き上がり呻き出した男の目は見開かれ、血走っている。リリィに向かい歯をむき出しにする姿はまるで、映画に出てくるゾンビのようだ。
「やめろ……! このっ!!」
顔を蹴飛ばし、リリィの前に立つ。
「どうしたんだ!!
話聞け! 俺らは案内をしてほしいだけだ!!」
「ウグウウウウウゥ…………アア!!!」
だめだ。完全に言葉が通じてねえ。
よだれを垂らしながら走ってくる。
気持ち悪い……なんだってんだ。
やるしかない。
短刀を抜き構えるが、
男の攻撃は俺に届くことはなかった。
「<飛燕>」
炎の鳥が男を飲み込む。
しばらく悶えた後、男は動かなくなった。
静かだがよく通る高めの男の声。
<飛燕>とは、その声の主が放った魔法だろう。
声の先を見る。
大きな赤いフード、月をかたどった杖。
杖は常に淡く光り輝いている。
身長は俺よりわずかに低い。
前髪で顔の半分は隠れている。
「……話がしたい。
来い。<死者のカゴ>に行くんだろ。案内する。
頼みがあるんだ、<暗殺者>」
こんにちは
小夜寝草多と申します。
今回からまた新章突入です。
今まで書いてきた中でも、かなりお気に入りのお話です。
なんとなく説明的な文章が増えるかなと思いますが、暖かい目で見守っていただければと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




