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推し活サークルの事件簿  作者: 竹間単
■第一章  姫の私物が盗まれた!?

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【side 兄小田健】1-2


「このまま見つからなかったらどうしよう。姫がタケルンから貰った愛の手紙を失くしたって知ったら、きっとタケルン泣いちゃうよ。せっかく勇気を出して姫に手紙を渡してくれたのに」


「確認だけど、タケルンは俳優だよな。姫香ちゃんはどうやって手紙を貰う仲になったんだ?」


「タケルンの舞台に通ってるうちに、タケルンが舞台上から姫に熱い視線を向けてくるようになったの。それに姫が可愛すぎるから、そのうち露骨なファンサもしてくれるようになって……きっとそれだけじゃ我慢が出来なくなって、タケルンは姫に愛の手紙を送ってきたんだと思う」


 舞台上での公私混同はどうかと思うけど、可愛い姫川氏にサービスをしたくなる気持ちは分かる気がする……って、そもそもタケルンは姫川氏の作った創作キャラクターだった。

 姫川氏は本当は魔法少女ひめるんで、タケルンは姫川氏の作った創作キャラクターで実際には存在しておらず、タケルンからのメッセージカードは姫川氏が自分で書いたカードで……ややこしい!

 情報が渋滞していて混乱してきた。


「昔からタケルンはファンを大切にする俳優ですからね。ファン全員にファンサをしてくれるんです。ファン全員に」


 徳佐氏が「ファン全員に」とやたら強調した。


「昔から? とっくん、タケルンの昔のことを知ってるの?」


「えっ!? あ、いや、これは友人の友人の彼氏の妹から聞いた話で……断じてボクはタケルンの古参ファンなわけではありませんよ!」


「友だちの友だちの彼氏の妹と話す機会があったの? ほとんど他人だよね?」


「ほとんどと言うか、完全に他人だな」


「た、他人と話す機会なんていくらでもあるじゃないですか! この世のほとんどが他人なんですから! タケルンファンの他人と偶然話す機会があったんです!」


 んん? 徳佐氏は姫川氏の創作話に乗ってあげているだけ……だよね?

 なんだかタケルンが実在しているみたいな言い方が気になる。

 というか、そういえばタケルンのブロマイドとか雑誌はどうやって作っているのだろう。フリー素材を使って姫川氏が作成しているのだろうか。

 それとも、もしかして……タケルンは、実在する?


「あのー、つかぬことをお伺いしちゃうけど……タケルン氏は実在の人物なのかお?」


「あにおだは何を言ってるの? 実在しない人物の舞台には行けないよ?」


「それは姫川氏の作り話で……」


「姫に虚言癖はないよ」


 姫川氏が、真顔でそう言った。


「あっ、その……ぐぬぬ」


「行き過ぎたアニメオタクである兄小田先輩の発言だということを考慮すると、タケルンのことをアニメキャラだと思ったとかそういう話ですか?」


 拙者の発言を聞いていた徳佐氏が、呆れたように溜息を吐いた。


「むむむ。アニメキャラというか、姫川氏の創作キャラというか……」


「タケルンは実在の人物ですよ。ただタケルンのことを『イケメン俳優という偶像』として見るなら、創作キャラと言えなくもないですけどね。竹城健は芸名ですし」


 徳佐氏は「タケルン」が俳優として作り上げられたキャラクターだという意味でなら、創作キャラクターかもしれないと言ってくれたけど、それは拙者の欲しい回答ではない。

 拙者はタケルンが触ることの出来ない完全なる創作キャラクターだと思っていた。しかし、どうやら違うらしい。

 拙者がタケルン氏が実在していた事実に驚いていると、姫川氏がおずおずと切り出した。


「本当にごめん。みんなのことを疑ってるわけじゃないんだけど、やっぱり一回荷物検査をさせてくれないかな? だって姫、メッセージカードを鞄の中に入れておいたんだもん。いくら探しても部室のどこかに隠れてるわけがないよ」


 メッセージカードを鞄から出した記憶が無いのに、部室内を探しても出てくるわけがないと思うのは当然だ。正直、拙者だってメッセージカードが部室のどこかに隠れているとは思っていない。だってこれは、ただの時間稼ぎだから。


「荷物検査……どうしてもするんだお?」


「ごめんね。でも荷物検査さえしちゃえば、みんなのことを疑わずに済むから……ほら、外部犯の可能性もあるでしょ?」


 そうか! もし外部犯だと思ってもらえたら、拙者たちの荷物検査はナシになるかもしれないということか!?


「な、なるほど。外部犯の可能性もありましたね」


「あ、ああ。外部犯かもしれないよな」


「が、外部犯に違いないんだお。例えば、部室に迷い込んだぬこたんとか!?」


「さすがに猫の可能性は……い、いえ、その可能性もありますね!?」


「そ、そうだな。猫犯人説も考える必要があるな!? カードを咥えて逃げたのかもしれないな!?」


「は、犯人、いや犯ニャンはきっとまだ近くにいるんだお!? 探した方が良いんだお!?」


 このまま犯ニャンを探す流れになってくれれば、また時間稼ぎが出来る。それに外を探しに行くことになれば、その隙に拙者の鞄の中に入っているラブレターを別の場所に隠すことが出来る。どうか犯ニャンを探す流れになりますように!


「なんだかみんな歯切れが悪い……かと思えば急に語気が強くなったけど、どうしたの?」


 拙者たちは思わず顔を見合わせた。

 鉄堂氏は顔を真っ青にしているし、徳佐氏は目が泳ぎまくっている。

 きっと拙者も滝のような汗をかいているに違いない。

 ……って、どうして鉄堂氏と徳佐氏はそんなに動揺しているのだろう。

 もしかして二人も、拙者と同じように、姫川氏宛のラブレターを持ってきている!?


「みんなで鞄を確認し合おう。別に誰かがやったと思ってるわけじゃなくて、みんなの無実を確信するための荷物検査だから、ね?」


 これ以上拒否できるわけもなく、ついにサークルメンバーの荷物検査が実施された。

 すると……。



「徳佐氏の鞄からメッセージカードが出てきたんだお!?」

「兄小田の鞄からもメッセージカードが出てきたぞ!?」

「鉄堂先輩の鞄からもメッセージカードが出てきましたよ!?」



「わーい、メッセージカードがいっぱい……って、なんで全員メッセージカードを持ってるの!?」




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