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推し活サークルの事件簿  作者: 竹間単
■第一章  姫の私物が盗まれた!?

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【side 兄小田健】1-1

【side 兄小田健】



 拙者は、見た目も中身もどっぷりアニメオタクの大学生。

 最近は『魔法少女☆ひめるん』というアニメにハマっているのだけど……この前、確信しちゃったのだ。

 姫川氏の正体は『魔法少女☆ひめるん』に出てくる、大食いでツインテールの魔法少女ひめるんだったのだ!

 こんなことが現実に起こるなんて、さすがの拙者もびっくりしてしまった。

 まさかひめるんが、アニメの世界から飛び出してくるなんて!

 拙者が姫川氏の正体に気付いた理由だけど、まずなんと言っても名前が「姫川姫香」で、苗字も名前も「ひめるん」を主張している!

 それに姫川氏は、すぐ会話に「タケルン」というキーワードを挟んでくる。みんなは気付いていないだろうけど、賢い拙者はピンときた。「タケルン」と「ひめるん」は響きが似ているから、姫川氏はきっと自分がひめるんであることの匂わせをしているのだ!

 さらに姫川氏がひめるんだという証拠はこれだけではない。他の学生と比べて姫川氏は背が低いのだ。これは姫川氏の正体がひめるんで、ひめるんがまだ中学生だからに違いない!

 姫川氏が単位を落としそうになっているのも、中学生にとって大学の講義が難しすぎるからだ!

 ほら、姫川氏の正体がひめるんだという証拠だらけ。

 拙者の目は誤魔化せない!



 とにかく、姫川氏がひめるんだと分かったからには、愛の告白をしなければ!

 だってこの先、推しに告白するチャンスなんてきっとやってこない。拙者の推しはみんな恥ずかしがり屋で、画面から出てきてはくれないのだから。

 そういうわけで、拙者は生まれて初めてラブレターを書いた。いつ渡すかは決めていないけど、タイミングを見て……。

 と思っていたのに、ラブレターを持っているという事実だけで緊張でお腹が痛くなってきて、今日は何度もトイレに行ってしまった。部室に来てからも一回トイレへ行った。

 そして、やっと腹痛が治まったと思ったら、今度は泥棒騒ぎ。

 「タケルン」は姫川氏が、自分がひめるんだと気付いてもらうために作った架空の人物だろうから、泥棒騒ぎは正直茶番だ。きっと姫川氏は自分で書いたメッセージカードをタケルンから貰ったことにしているのだろう。とはいえ姫川氏の私物を盗む行為は許されるものではない。

 それに姫川氏のやりたいことは全部やらせてあげたいから、拙者もタケルンから貰ったメッセージカードという設定に全力で乗っかっておく。

 拙者はイイ男だ……って、ぬうわあああーーーーー!!

 全員の荷物検査!?

 まずい! まずい! 非常にまずい!

 このままだと最悪のタイミングでラブレターを披露することになってしまう。

 こんなタイミングで告白をしたら、上手くいくものも上手くいかないはずだ。

 愛の告白はもっとロマンチックなところで……例えば『魔法少女☆ひめるん』に登場した城の展望台のような場所で二人で夕陽を浴びながら、ああ、あのシーンには感動したなあ……って違ーう!

 現実逃避をしている場合ではなかった。


「ねえ。みんなには悪いけど、一応荷物検査を……」


「まだ調べるところは他にもあるはずだお!?」


 拙者は、姫川氏の提案を全力で阻止することにした。

 姫川氏には申し訳ないけど、これもロマンチックな愛の告白をするための布石だから、許してほしい。

 拙者、姫川氏がうっとりするような愛の告白を考えておくから!

 ひめるんに、愛の魔法を掛けちゃうから!



 それにしても姫川氏の私物を盗むなんて、とんでもないやつだ。

 拙者だってまだ盗んだことはないのに……あ、いや、今後も盗むつもりはないけども。これっぽっちも、本当に、全く、全然。


「荷物検査をしないならどうするの? 他にどこを探すの?」


「まずは部室の中を探してみるんだお。部室が散らかってるから、何かの下敷きになってる可能性があるんだお」


「部室を散らかしているのは主に兄小田先輩ですけどね」


 徳佐氏が拙者のことを冷ややかな目で見てくる。

 確かに部室内に散らかっているのは、ほとんどがひめるんグッズだ。つまりは拙者の私物。


「散らかして申し訳ないとは思ってるんだお。ひめるんフィギュアにひめるんカード、ひめるんサイダーにひめるん本の数々……荷物が多いのはオタクの特徴と思って大目に見てほしいんだお」


「俺もオタクだが、整理整頓は出来るぞ」


「姫もタケルンのブロマイドとか雑誌とか、綺麗にまとめてるよ」


「片付けられない理由をオタクと結びつけるのは、オタクに対する風評被害に繋がるからやめてほしいです」


「四面楚歌なんだお!?」


 一瞬にしてサークルの仲間たちが敵になってしまった。

 そう言われてみると、拙者はオタクになる前から整理整頓が下手だったような気がする。

 オタクになる前というのがどれだけ昔のことかは思い出せないけど、「早く片付けなさい」がマッマの口癖だ。最近では「家をゴミ屋敷にするつもり!?」と「荷物ごと家から出て行け!」がマッマの口癖に追加された。


「面目ない……けど、拙者の片付けられない性格については、今は一旦忘れてほしいんだお。今は拙者の散らかし癖よりも、メッセージカード紛失事件に全力を注ぐべきなんだお」


「しれっと散らかし問題を棚上げにしたな」


「ゴキブリが怖いから、早いうちに片付けてね?」


「部室には大事な品々が置かれているので、虫がわくのは勘弁願いたいですね」


「分かったんだお。この機会に整理整頓するんだお」


 そう言って拙者は、床に散らばった荷物を片付け始めた。

 よし。意図してはいなかったけど、片付けをしている間は荷物検査を先送りに出来る。

 先送りにしたところで根本的な解決にはなっていないけど、時間の経過とともに何か良い方法を思いつくかもしれない。

 それに本当に、拙者の散らかした荷物の下に姫川氏のメッセージカードが落ちている可能性だってある。




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