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推し活サークルの事件簿  作者: 竹間単
■第二章  部誌を作って部室を守れ!

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17/23

【side 徳佐翼】2-1

【side 徳佐翼】



 先程、兄小田先輩が一人称のアップデートに失敗した話をしていましたが、実はあれ、ボクもなんです。

 ボクは自分のことをボクと呼んでいますが、性別は女です。なぜかサークルメンバーはボクのことを男だと思い込んでいるようですが……。

 ボクが自分のことをボクと呼ぶようになった経緯ですが、ボクの周りには特撮オタクがいませんでした。ですがどうしても誰かと特撮の話がしたかったので、同志を求めてSNSを覗いていたんです。

 するとすぐに特撮オタクのコミュニティが見つかりました。

 半年ROMれの教えを守り、しばらくは仲間に入らずにコミュニティの観察をしていたのですが……男女比がえぐいんですよね。9:1とか10:0とかそんな感じ。

 女ばかりのコミュニティもありましたが、イケメン俳優の話が多くて、ボクの求めているものではなかったんです。ボクは特撮モノのストーリー考察や特撮技術の話がしたかったので……。

 ネットというのは便利なもので、顔が見えない状態で文字だけのやり取りが出来ます。

 それなら本当は女だろうが一人称さえ変えておけば、男ばかりのコミュニティに入ったところで違和感はないと思いました。

 ボクは、同じ推しを持つ者同士にとって性別なんか些細な問題だと思っているのですが、極端に異性が苦手なオタクが存在することもまた事実です。

 逆に、性別を知った途端に、卑猥な画像を送りつける人もいるようです。

 SNSは他人を攻撃するためのツールではないはずなのに、どうしてそんなことをするのだろうと頭が痛くなります。

 相手の嫌がることをして、一体何の得があるのでしょう。一体何が楽しいのでしょう。

 そんなことをする時間があるなら、推し活をして、推しへの愛を叫べばいいのに。

 まあとにかく。こういう理由で、ボクは一人称を「ボク」にして、ネットの世界では性別を偽ることにしたのです。

 ですが習慣って怖いですよね。ネットでそんなことをしているうちに、ボクはリアルでも自分のことを「ボク」と言うようになってしまいました。

 大学生にもなって「ボクっ娘」って痛いですよね!?

 そろそろ一人称を「私」に戻した方がいいですよね!?

 そう思って今日は自分のことを私と呼ぼうとしてみたものの、口が勝手にボクと言ってしまいます。長年の癖はそう簡単には抜けないようです。

 ……と、今はそれどころではありませんね。

 このマーダーミステリーを解決して、部誌を完成させないと。



「マダミスのシナリオ内に出てきた小物のどれかに毒が入っていたと考えるのが自然ですよね」


「でも飲食物は紅茶とクッキーだけだよ?」


「今さらだけど、リボンネコオタクは自室でクッキーをつまみ食いしちゃってるんだお。みんながリビングで待ってるのに、良くないんだお」


「いや待て。リボンネコオタクは、紅茶は飲んでいたようだが、それ以外の記述はない」


 言われてみると、シナリオ内にリボンネコオタクがクッキーを食べたという記述はありません。

 リボンネコオタクの近くにティーカップが転がっていましたし、鑑識オタクが飲んだと言っているので、紅茶は飲んでいたようですが……これも毒とは関係が無いようです。


「ですが、これからみんなで誕生日パーティーをするのに、わざわざ自室で紅茶を飲むというのも変ですよね」


「みんなが家に来るまで自室で飲んでた紅茶が残ってたから、飲み干しただけじゃないかな。紅茶を放置するとティーカップが茶色くなっちゃうもん」


「拙者、分かったんだお! リボンネコオタクはただ紅茶を飲んだわけじゃなくて、きっと紅茶で毒を流し込んだんだお。だからこれは自殺なんだお!」


「自殺だとしたら毒物が入っていた瓶がどこかにあるはずだが、そんな記述はない。毒が入っていたのが瓶ではない可能性もあるが、それにしたってそれらしきものの影も形もない」


 鉄堂先輩の言う通り、毒物が入っていた瓶もしくは毒の仕込まれた品は、シナリオ内のどこかには出てきているはずです。そうでないと、ゲームとしてあまりにもアンフェアです。


「分かりやすい毒薬の瓶が現場に無いということは、犯人がリボンネコオタクにバレないように毒を盛った可能性が高い」


「シナリオ内に出てくる物は……ハンディファン、フラワーアレンジメント、クッキー、リボンネコグッズ、リボンネコの写真、紅茶、ティーカップ、スマートフォンあたりですかね」


「壁と床も出てきたんだお。どっちかに毒が塗ってあって、リボンネコオタクが舐めた可能性もあるんだお。リボンネコオタクは床ソムリエだったのかもしれないんだお」


「……それ、本気で言ってます?」


「ごめんなんだお」


 そんな特殊な趣味があるなら、シナリオ内のどこかに書かれているはずですが、もちろんリボンネコオタクが床ソムリエなんて記述はありません。というか、何ですか床ソムリエって。


「リボンネコグッズとリボンネコの写真は、もともとリボンネコオタクの部屋にあったものだから、関係ないんじゃないか? リボンネコグッズの中に毒薬の瓶が隠されていました、というのはあまりにも理不尽だからな」


 それがアリなら、何でもアリになってしまいます。

 それこそ床下や壁の中に隠した可能性だって出てきてしまいます。

 リボンネコオタクの部屋にあったグッズの詳細が書かれていないことから考えて、グッズは毒薬の隠し場所から除外しても良さそうです。


「スマートフォンも、三人ともずっと自分で持ってたから関係ないと思うな」


「紅茶とクッキーには毒物反応が無かったと記述がありましたね。そうなると残るは、ハンディファン、フラワーアレンジメント、ティーカップの三つですか」


 ティーカップに毒が塗られているトリックはミステリーでよくありますが、リボンネコオタクの部屋にあったティーカップに、リビングにしか通されていない三人が毒を仕込むのはかなり難しそうです。


「小物じゃなくて、リボンネコオタクの手に毒が付いてた可能性はないかな?」


「ハッ!? リボンネコオタクは毒の塗られた壁に手をついてから、手をペロペロしたせいで死んじゃったんだお!?」


「兄小田先輩、真面目にやってください」


「拙者、真面目にやってるんだお……」


 真面目にその推理をしているなら、それはそれで問題がある気がします。




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