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第四話:夜空の下の約束と、美しい嘘の始まり

#カタワレ時の手紙 #なろう悲恋 #涙腺崩壊 #エドとあかり #諏訪湖 #君の名は聖地 #泣ける小説 #感動の結末

私たちは黄昏の残された時間のすべてを、立石公園の隅々まで探し歩くことに費やした。私とあかりは、雪に覆われた低木の陰、冷え切ったベンチの下を覗き込み、あの『ロングスライダー』のあらゆる隙間を何度も確認した。しかし、あの大きくて丸い目をしたリカちゃん人形は、まるで夜の深い闇に吸い込まれてしまったかのように姿を消していた。フワちゃんは、どこにも見つからなかった。


眼下に広がる諏訪湖の周囲の街明かりがぽつぽつと灯り始め、まるで散らばった宝石の絨毯のようにきらめいている。夜風は一段と強さを増し、骨の奥まで突き刺さるような容赦のない冷気を運んできた。


あかりは再びうつむいてしまった。睡魔と極寒、そして胸を締め付けるほどの大きな失恋に耐えかねて、その小さな肩がまた激しく震え始める。


「フワちゃん……本当に、いっちゃったのかな……」

彼女は、今にも消え入りそうなかすれ声で呟いた。


再び涙に潤む彼女の瞳を見て、私の胸はきゅっと締め付けられるように痛んだ。私はもう一度雪の上に膝を突き、その小さな少女の顔をじっと見つめた。私は知っていた。もしこのまま彼女をこの深い悲しみとともに家に帰してしまえば、彼女の夜は恐ろしい悪夢で満たされてしまうだろう。哲学と文学を愛する者として、現実というものは時に10歳の子どもの心が受け止めるにはあまりにも残酷すぎることを知っている。文学の使命――そして、他者を想う人間の義務とは、その灰色の現実に温かな色彩を添えてあげることだ。


「あかりちゃん」私はできる限り優しい声で呼びかけ、彼女のニット帽に積もった雪をそっと払った。「ねえ、知ってる? 私たちの目から見えなくなってしまったからといって、その存在が私たちを愛することをやめてしまったわけではないんだよ」


彼女は顔を上げ、涙の残る丸い瞳で私を見つめた。「え?」


「フワちゃんは、とってもお洒落で可愛いお人形さんだよね? 私はね、彼女は迷子になったんじゃないと思うんだ」私は少し謎めいた微笑みを浮かべた。「彼女は……きっと今、ものすごく格好いいことをしているんだよ。そう、世界一周の大冒険に出発したんだ」


「大冒険……?」 あかりは、困惑と好奇心が混ざり合ったようにパチパチと目を瞬かせた。


「そうさ。私の国、インドネシアにはね、人生と愛に関するこんな哲学があるんだ」私は視線を少しだけ動かし、眼下で白く凍りつく諏訪湖を見つめながら語りかけた。「本当の愛というものは、相手をきつく縛りつけて息苦しくさせるような縄じゃない。本当の愛はね、どこまでも広がる自由な大気のようなものさ。愛するものがどこまでも高く飛んでいける自由を与えながら、それでもいつでも、世界で一番温かい帰るべき場所を用意して待っている。それが愛なんだ」


私は再びあかりに視線を戻した。「フワちゃんは、あかりちゃんのことが大好きなんだよ。あかりちゃんの愛がどれほど大きいかを知っているからこそ、彼女は勇気を出して広い世界を見にいくことができたんだ。パリのエッフェル塔を見たり、エジプトのピラミッドを見たり、あるいは私の国にある美しいボロブドゥール寺院を見たりね。彼女はね、いつかあかりちゃんにたくさんのお土産話を聞かせてあげるために、今一生懸命旅をしているんだよ」


私の言葉を聴くうちに、あかりのすすり泣きがピタリと止まった。子ども特有の純粋な想像力が働き始め、私が紡いだ哲学的な言葉の一節一節を、彼女の心がじっと吸い込んでいくのが分かった。


「本当……? フワちゃん、私を捨てちゃったんじゃないの?」 彼女はまだ掠れた声で、確かめるように聞いてきた。


「まさか。こんなに可愛くて良い子を捨てる人なんて、世界のどこを探したっていやしないよ」私は心から優しく微笑んだ。彼女の瞳の中に、小さな希望の灯火が再び灯るのを見て、私の目頭も熱くなった。「さあ、もうすっかり寒くなったから、今日はお母さんと一緒に温かいお家に帰ろう。その代わり、お兄ちゃんとひとつだけ約束をしてくれるかい?」


「約束……? なぁに、エドお兄ちゃん」


「明日、また夕方になったらこの公園の、あの滑り台の前に来て。私は必ずここで君を待っているから。そしたらね……もしかしたら明日には、世界中を旅しているフワちゃんから、最初の便りや手紙が届いているかもしれないよ」


あかりは今度は力強く何度も頷き、その小さな唇にようやく微かな笑みが浮かんだ。駐車場で待っていたお母さんの元へ彼女が安全に戻り、小さく手を振り返してくれるのを見届けてから、私は踵を返し、上諏訪の小さな宿へと歩き始めた。


その夜、温かい畳の部屋で、私は修士論文の草稿を開かなかった。湯気を立てる緑茶の湯呑みが置かれた小さな木製机の上で、私は自分の小さなノートを開いた。黒いペンを握り、私は『世界で一番美しい嘘』の設計図を描き始めた。


私は一通の手紙を書き始める。フワちゃんが国際空港のロビーに佇み、遥か彼方の異国へと飛び立つ直前に、国際航空郵便で送ってきたかのような、そんな手紙だ。私の文字が、丁寧な日本語となって白い紙の上に並んでいく。私は言葉という不確かな、けれど絶対的な力を使って、あの小さな少女の傷ついた心を癒やすのだ。

第四話をお読みいただき、本当にありがとうございました。


極寒の夜空の下、あかりの喪失感を優しく包み込むようにエドが語った「愛と自由」の哲学。現実の残酷さから少女の心を守るため、エドは「世界で一番美しい嘘」を紡ぐことを決意します。夜の畳の部屋で、論文ではなく少女のための手紙を丁寧に書くエドの姿に、胸が温かくなりますね。


次回、第五話。

約束の翌日、夕暮れの立石公園。エドの手には、本当に「エッフェル塔のふもとから届いたフワちゃんの手紙」が握られていました。その手紙を読んだあかりの反応は――? そして、1月の休暇を通じて重ねられる、嘘の手紙がもたらす奇跡とは。

エドの紡ぐ想像力あふれる手紙の世界と、二人の心の絆の深まりを、ぜひ次回もお楽しみください!


続きが気になった方は、ぜひ【次の話へ】お進みください。皆様のブックマークへのご登録や評価(★★★★★)が、何より執筆の励みになります!

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