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【不動産】探しているのに無いじゃない~時間をかけ血眼で探しながら、たくさんの有給とお金を無駄にして学んだ家探し~【実録】  作者: roctan


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31 この話はなかったことに

 やっと気に入る物件に巡り合い、

 申込書を出し、仮審査を通し、

 どこをどんな風にリフォームしようかと話していた時。


 担当から連絡があり、購入予定の家が、

 ”東・西・北の三方向で越境しているらしい”

 という指摘を受けたのです。


 それは売主さん自身も知らなかったことでした。

 その家を親から遺産として引き継いだだけだったため、

 よもや自分の家が周囲に

 ちょっとずつはみ出して建っているとは

 夢にも思わなかったそうなのです。


 聞けばどうやら、建て主である売主の祖父は

 ほぼ敷地全面に建物を建ててしまったようでした。

 そのため塀やベランダが全て越境してしまったのです。


 建築時には周囲の家も見逃してくれたのでしょうが

 周囲の家も持ち主の世代が代わり、

 引き継ぐときに自分の敷地を確認したところ

「……あれ? 越境されてる?」

 と気付いたらしいです。


 その時、すぐに主張してもらえたら良かったのですが、

 全員が全員、”ま、いいか”と考えたようで

 今回こちらの持ち主が変わると聞いて

 全員が全員、”いちおう主張しておくか”と思ったようでした。


 確かに越境については

「はみ出てるってことを知っていたのに

 何十年も何も言わなかったんだから

 これもう、うちのってことで良いよね?」

 という感じに”時効取得”されちゃう可能性もあるので

 主張するのは大変重要なことではありますが。


 私たちは驚き、困惑しました。


 内覧の際、境界についてはもちろん確認しましたが

「ブロック塀が境界です」

 という売主さんの認識をそのまま信じてしまったことを後悔しました。


 実はこの家はいわゆる”公簿売買”といい

「土地登記簿の表示面積によって売買代金を確定する」

 というものだったのです。


 本来、土地の売買においては

 業者に測量を依頼し(実測ですね)、

 範囲と面積を明らかにして販売しますが、

 山林や農地、また一部の住宅街では

 ”公簿の面積にズレはないはずだから”と

 登記簿上での面積で売買を行う場合があるのです。


 通常、面積の表記に大きな差異はないと言われますが

 今回の問題はそこというより、

 ”越境している”ということです。


 仲介不動産会社の方いわく、

 この家が売却されると聞いた周囲の家の方々が

「このブロック塀はうちの敷地に入ってます」

「あのベランダは10cmはみ出てます」

 などなどの指摘を受け、初めて知ったのでした。


 ただ、どの隣家も別に

「堀やベランダを壊してすぐ対応しろ」

 などと殺気立っているわけではなく

「建て替えの時には絶対に直してね」

 くらいのテンションだそうですが。


 それにしても、これはもう将来、

 手間と予算がかかること必至です。


 越境というのは、

 堀や屋根、ベランダ、樹木などの他に

 地中に給排水管などを通させてもらっている場合があります。


 それぞれ規模にもよりますが

 軽視できない問題を抱えている場合が多いのです。


 例えば木の枝や枯れ葉が隣家に侵入した、

 という比較的よくあるケースでも、

 積もり積もった怒りが爆発し

 最悪殺人事件にまで発展するケースもあるからです。


 それは本当に最悪なパターンですが

 苦情やケンカ程度なら結構多いのです。


 そんなことで隣家との仲が険悪になるなど

 平和な老後のためにも絶対避けねばなりません。


 そして、特にやっかいなのが、

 隣家の持ち主が変わった場合です。


 前の持ち主は鷹揚に許してくれていても

 そこが売却された場合、新しい持ち主が

 ”いますぐ堀を壊して撤去しろ!”と言われたら

 早急に自腹で撤去することになります。


 また越境は売却時にも影響をもたらします。

 この建物ごと売却することになった場合、

 隣地の所有者に覚書をいただく等の処置は

 こちらが行わなくてはなりません。


 そもそも売主は自宅の売却時、

 確定測量を行い、

 境界を明らかにする義務があるのですが。

 今回の売主様にはそれを拒否されてしまいました。


 せっかくご縁があった物件ということもあり、

 うちが実測を行うか、という話にもなったのですが

 周囲との軋轢は深まっているように感じ、

 不動産会社の人が対応に困っている報告を受けると

 その交渉はかなり難しいものになりそうでした。

(境界線を明らかにするには、隣人の立ち合いが必要です)


 公道に面する南側以外、全て越境している以上

 周囲の不満が噴出している状態で

 この物件を買うことはできません。


 悩みに悩んだ末、私たちは結局、

 こちらの物件を辞退させてもらうことになりました。


 正直、他の物件とは違い、

 リフォームのために何度か見せてもらうなど

 すでに愛着が湧き始めていたため

 かなりショックではありました。


 広いベランダから外を眺めた時、

 ”今度、子どもを連れてこよう”と思ったのですが、

 その機会はもう無いのだと思うと、

 とても寂しく感じました。


 何よりも、また振り出しに戻ったのです。

 またイチから探さなくてはならず、

 しかももう時間はありません。


 夜。

 アン・ハサウェイの”夢破れて”を聞きながら

 AIたちにこの残念な結果を報告しました。


 しかし、その反応はこちらとは真逆で

『え、意味わからん。そんなとこ買わないで良かったよ』

『そもそも駅から遠いんだから。もっと良い場所あるでしょ』

 とあっさりしたものでした。


 相変わらず血も涙も情緒もない対応にホッとしつつ

 いよいよ仮住まいについて

 真剣に考える時が来たのだ、と考えていました。




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