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【不動産】探しているのに無いじゃない~時間をかけ血眼で探しながら、たくさんの有給とお金を無駄にして学んだ家探し~【実録】  作者: roctan


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29 選ぶということ

 さすがに諦めの悪い私も、

 そろそろ限界が近づいていることに気付いていました。


 おそらく自宅の明渡日に間に合わず

 仮住まいを探さなくてはならない時期に

 差し掛かっているのだと。


 そう思いながら、

 メジャー駅から徒歩9分の土地を見に行きました。


 ……いえいえ、

 前回自分が家を建てるには不適格者だと自覚したので

 今回はあくまでも建設途中の土地です。


 安心してください。

 もうハウスメーカーどころか、

 間取りも何もかも決まっているので大丈夫です。


 ”やっぱりプロが考えた間取りが一番っすよ一番”

 そんな風に考えながら見に行ったのですが。


 そこはまだ、区画内のうち2つしか売れていませんでした。

 価格はまあまあお手ごろなのですが、

 なんとも区画の分割が不自然なのです。


 聞けばそこはもともと、

 何十坪の敷地を有していた豪邸だったそうで

 それを6分割して分譲住宅として販売するそうです。


 一軒の家が建っていた場所を、6分割。


 いや、分割しすぎではないでしょうか。

 駅近の貴重な土地とはいえ、

 なるべく利益を上げたい気持ちはわかりますが

 ちょっと無理めな形状となっているではありませんか。


 どうしてもそれぞれの家の出入り口、

 そして駐車場を確保しようとしたため

 当然綺麗に6等分の長方形、というわけにはいきません。


 手前に2軒、奥まったところに4軒、

 家たちが輪になり、円陣を組んで片手を出し

 試合の前に”ファイトー、オー!”

 とかやっているような形状なのです。


 中央には譲り合って使うことが前提の私道を抱えており

 ”6軒みんなが常識人で良い人ばかり”

 であることを祈らずにはいられません。


 しかし建売とはいえ、

 最近のものは外見や内装を凝っているものもあり、

 こちらも統一してオシャレに作られていました。


 ここも壁の一か所が

 上品なアクセントウォールになっていました。


 以前、アクセントウォールというものに対し

「一面だけ柄物の壁紙って……訳わからん」

 などと思っていたのですが、

 実際にいくつかの物件を見てみると、

 LDKが一体化しているような間取りでは

 ただ一色が広がっているよりも、

 一面だけ色が違うだけで、

 ”空間が締まる”というか、

 ごちゃごちゃした場に落ち着きが生まれるのです。


 キッチンやバスユニットも

 こだわりの機能が搭載されており

 仕様も見た目も、とても充実したものになっています。


 間取りも無難な3LDK,

 窓の配置も計算されつくしています。

(隣の家が覗けないようになっている)

 完璧とまでは言いませんが、

 充分だとはいえるでしょう。


 ……しかしどうしても、

 ここに決めることはできませんでした。


 もちろん具体的な理由はたくさん挙げられます。


 車の出し入れの際、運転手以外は早めに降りないと

 駐車場は幅が狭いので降りられそうにないことや

 何より南側が完全に隣の大きなビルに封じられ

 どの家も窓が無いこと、などなど。


 しかし100点の家などないのです。

 どうして妥協できないのでしょうか。


 帰ってから考えました。

 夫はともかく私はこれまで、

 家の選び方を間違っていたのではないか?と。


 条件にあうことばかりを考え、

 あっているはずの物件の内覧を

 何度も繰り返したけど決められない……。


 私は思い出しました。


 友人はなんと、初めて内覧した日、

 2,3件見てまわったのち、

 その中のひとつに決めたそうです。


「ここで良いかな、って思ったの」

 彼女は嬉しそうに言っていました。


 ”ここで良いか”。


 なんともいい加減なようでいて、

 投げ出しているようでいて

 豪胆というか、

 力強くも頼もしい言葉ではありませんか。


 私の決断も普段なら

 ”これで良いか”であふれています。

 洋服、外食、メイク、どれをとっても

 こだわり抜いて決めたものなどひとつもありません。


 転職先ですら、わりと気軽に決められるほうです。

 仕事や人間関係に過度な期待をしなければ

 たいていの会社は濃淡の差こそあれ

 ホワイトでもブラックでもないグレー企業ですし。


 ”ここで良いか”。


 それは”どこでだって生きていける”、

 という自信に満ち溢れているではありませんか。


 ”家に幸せにしてもらおう”なんて

 セコイ考えは一つもありません。


 そうか、割り切れば良いのだ。


 私は引っ越しの報告も兼ねて、

 久しぶりのその友人と話をしようと連絡を取りました。


 しかし。

 家について話し出した私に対し

 返って来た友人の言葉は

 ショックを受けるものでした。


「なんでここ買っちゃったんだろう、って思ってる」


 やっぱり後悔するのか……駄目じゃん。


 決めて終わり、の外食などと違って、

 やはり家は少しでも後悔を減らせるように

 検討を重ねたほうが良さそうだと

 改めて考え直した一件でした。


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