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【不動産】探しているのに無いじゃない~時間をかけ血眼で探しながら、たくさんの有給とお金を無駄にして学んだ家探し~【実録】  作者: roctan


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25 ゴリ押し営業

 基本的に不動産会社の方はとても親切です。


 ただ稀に、かなり大きいところでも

 ”売ること”がただ一つの目的であることを

 隠しきれていない会社もありました。


「とにかく自社まで来てください」


 そう何度も言われて訪れたオフィスは

 自社ビルの中にある

 とても綺麗な部屋でした。


 あらかじめメールで何度か

 こちらの希望詳細を伝えており

 それらの返信には確かに、

「ご希望エリアの物件をたくさんご紹介しますね」

 とあったので、伺うことにしたのですが。


 担当が来る前に、おや? と思うところはありました。


 別のテーブルで、若い夫婦を前に

 ここの社員が大声で”説明”という名の

 ”説得”をしていたのです。


 画面にたくさんのグラフや表を出し、

 ”いかにして家を手に入れるか”を語っているのですが

 どれも”統計の誤用”というか、

 狙った目的で集計されたものばかりなのが気になりました。


 いわゆる”詐欺グラフ”(事実誤認を誘った、

 都合の良い印象を与えるためだけに作られたもの)

 とまでは言いませんが、

 鵜呑みにするには微妙なデータ群です。


(例えば病院の内科の待合室で

 ”いま体にどこか具合の悪い人”を集計した場合、

 その数値は限りなく100%に近くなる、そんな感じ)


 それを指し示し、ローンがいかに便利であるか、

 賃貸よりも問題なく支払うことができるか、など

 大声で語っていました。


 ファイナンシャルプランニングを学んだ者としては

 ”ちょっと待った”をかけたいところではありましたが、

 内容的にはギリギリ”そうも言えなくもない”程度だったことや

 若夫婦が帰りたそうにしていたので見守っていたところ、

 私たちの前に年配の男性と若い女性が現れたのです。


 丁寧な挨拶の後、まずは男性が、

 夫の収入等をパソコンに入力し……。


「お客様の年収ですと、

 〇千万円までローンが可能ですね!」

 などと言い放ったのです。


 こちらの予算は伝えてあるにも関わらず、

 それに加え、家を一軒買えるほどのローンを組め、と。


 ”おいおい、50歳過ぎてそんな多額のローン、

 抱えるわけないだろ”

 内心毒づきながらも、笑顔を保ちつつ受け流しました。

 ……大人ですので。


 夫はさらりと

「基本的には自宅の売却益で

 まかないたいと考えています」

 とはっきり答えました。


 しかし、彼はあいまいにうなずいた後

「それではこの先は彼女がご案内させていただきますね」

 と言い、去って行ってしまいました。

 どうやら彼は”ローン計算担当”なのでしょう。


 残された彼女はニコニコしながら、

 私たちの目の前に

 たくさんの物件が乗った紙を並べ始めました。


 しかしそこに書かれていたのは、

 希望地の物件などひとつも無くて、

 かなりマイナーなエリアの、

 駅からバスを使用するような家ばかりだったのです。


 もう、何一つ、希望に沿ってねえよ。


 あぜんとする私たちに、

 彼女はこうハッキリと宣言したのです。

「お客様のご予算では、この辺りしか買えませんねえ」


 まじまじと見るそれは、

 今の居住区よりさらに市街地から離れたエリアでした。

 そしてそれは、全てこの不動産会社が

 つい最近開発した区画の建売ばかりの。


 怒りを通りこして笑いが込み上げてきました。


 私たちが素直に”そうですか”と答え、

 この中から選んでくれたらラッキー、

 くらいに思っているのでしょう。


 しかし、彼らの目的はそれだけではありませんでした。


 無言のままの私たちに、彼女は続けました。

「もしご希望の場所をお望みでしたら

 ご予算をうーんと上げるしかありません。

 でも大丈夫ですよ、ローンは〇千万円までOKなんですから」


 もう呆れて声になりませんでした。


 今までたくさんの不動産屋と話し、

 物件サイトを見て、内覧してきたのです。


 もちろん不動産価格が高騰中というのも承知で

 そのため新築ではなく中古物件も希望に入れ、

 エリアにも幅を持たせてきました。


 売却益だけで買えない分はローンにすることも

 全ての不動産会社に伝えて来ましたが、

 どこもこちらの意をわかってくれて、

 負担の少ない形での”はみ出し方”で

 物件を紹介してくれました。


 つまり充分に探してこれた予算だったわけで

 売却益だけで買える物件もちらほらあったのです。


 ”ローンを何千万円も抱えないと希望のエリアは買えない”

 そんなことを言われたのは、ここが初めてでした。


「へえ、そうなんですか? ありませんか?」

「はい、難しいですね。

 この予算なら……あー、この駅の、徒歩30分かな」


 徒歩30分というのは、

 ”歩けない”ということでは無いでしょうか。


 私は何となく察していました。


 この会社の駅は今まで、

 別の不動産会社に探してもらっていました。

(大手は路線が広域でも探してくれます)


 だからメールで

「この駅の不動産会社に来たことはありますか?」

 と聞かれて、いいえ、と答えていたのです。


 だからこの女性担当者は勝手に

 私たちが”探し始めたばかり”だと解釈していたのでしょう。


 一周回って面白くなってきましたが、

 ここはもうダメだと思ったので、

 いちおう反論しておきました。


「そうですかー(棒読み)。

 今まで希望に沿った結構な数の物件を、

 予算内か少々上乗せくらいでご紹介いただき

 たくさん内覧してまいりましたから。

 ……こちらは徒歩30分ですか(笑」


 ”いや、普通にあるでしょ? 

 他の不動産会社はちゃんと紹介してくれてたよ。

 つか、この会社には無いってことね”

 ということを暗に含ませながら。


 すると一瞬驚いた後、

「ええまあ、あるにはあるんですが……」

 と言いながら、希望に近い物件情報を

 ごそごそとファイルから取り出してきました。


 あるじゃん。

 とはいえ、どれも物件サイトにあるヤツばかりですが。


 ”あなたはメールで、

 希望地の物件をたくさん紹介するって言ったよね?

 この駅なら未公開物件もあるって”


 その言葉を飲み込みつつ、

 出されたコーヒーを飲みながら一瞥して

「そちらはすでに内覧したものや検討済みの物件ですね」

 そう答えると、彼女は小声で

「新たな物件が出たらご連絡しますね」

 と返してきました。


 そして”交通費返せよ”と思いながら、

 私たちは帰りました。


 その晩からメールや電話で何度も

 その担当から連絡はありましたが、

 見せつけられた手口や魂胆に辟易していたことや

 その不動産会社は自社物件以外はあまり情報を保有していない

(物件サイトで扱っているものくらい)ことが判ったので

 相談を続けることはありませんでした。


 このように、悪徳とまではいいませんが

 たまにこのような不動産会社に出くわすことがあります。

 ”予算を上げさせ、多額ローンを組ませようとする”、

 ”こちらが興味がある物件ではなく、

 自社が売りたい物件を押し付ける”


 こういうところは、出された飲み物を飲み干した瞬間が

 一番の去り時だと思われます。



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