19 負動産は避けたいんです
前回の水没物件は見送りましたが、
対象エリアを拡大した私たちは
また新たな物件を発見することができました。
広域の物件チェックは大変だけど、
成果は確実に得られます。
今回の物件も前回の物件同様、
大昔から閑静な邸宅地として有名な場所にありました。
前回の水没物件があったエリアが”ビバリーヒルズ”なら
今回のエリアは由緒だけでなく
文化も感じさせる”ウィーン”でしょうか。
(かなりおおげさです)
それは超メジャー駅から徒歩8分、
大きな公園や文化施設も多くある
ゆったりとした低層住居専用地域でした。
さっそく内覧を申し込み、
その週末にお伺いしたところ、
不動産会社の人とともに
現在の持ち主さんが案内してくれました。
持ち主さんは礼儀正しくおっとりとした方で、
江戸切子や高級酒の並んだガラスケースや
なんでも鑑定団に持ち込めば
値段をつけてくれそうな品々の間を歩きながら
注文住宅の説明を詳しくしてくださいました。
その物件Mは、”人当たりは良くエレガントだけど、
内面は一癖もふた癖もある紳士”のようでした。
貫禄があって立派だけど、
実はクセが強くて一筋縄ではいかない人。
階段の幅も最近の建売の1.5倍はあるのですが
ぐるんと回転しており、
大きめの荷物を運ぶのは面倒そうです。
出窓や扉は特注ものが多く、とても素敵なのですが
とにかく古いため交換の時期を迎えています。
そうなると、特注であることが裏目に出て
かなり高額のリフォームとなってしまいます。
そしてこの物件の最大のネックは、
古さではなく”巨大な地下室”でした。
昔は地下室を設けることは原則として禁止されていました。
しかし1994年の建築基準法改正以降は、
一定の条件(ドライエリアや換気設備の設置等)を満たせば
合法的に居室を作ることが可能になったのです。
この家の地下室は、
ドライエリアや上方に窓があるタイプではなく
完全に窓のない”無窓居室”でした。
案内されつつ降りてみると、
そこは趣味の部屋にも出来そうな
”籠りたいタイプ”には魅力的な空間が広がっていました。
ビリヤード台を置くのも良し、
シアターやカラオケルームにするのも良し。
外からの光も音も聞こえないため、
静かに眠ることも可能だと思われます。
しかし……。
このタイプの地下室は、
除湿・換気設備を作動させなくてはなりません。
家の持ち主さんも、
「ずっとつけてますね。
だから今のところカビは大丈夫です」
とおっしゃっていました。
(月々1,500円~6,000円前後の電気代がかかるらしい)
さらに地下室はランニングコストが高いだけでなく、
建て替えの際も大変なのです。
売り主と別れ、外に出たあと、
不動産会社の人が教えてくれました。
将来、土地を売る際には
埋め立てて更地にするほうが売れますが、
コンクリートの基礎を取り除く工事が大変で
その費用は何百万円にものぼるそうです。
地下の基礎をそのままに使って、
もう一度地下室を作るのが最も安上がりですが
維持費が高い地下室を希望する人は少ないので
どうしても買い手を選ぶ物件となってしまうのです。
古さのため特注品の完全フルリフォームが必要、
そして将来のやっかいな火種、地下室。
物件自体はなかなか良いのですが
これはかなり見逃せないマイナスポイントです。
結局、こちらも見送ることになりました。
”買う前から売る気満々”の私たち夫婦にとって
売れにくい要素が強い物件なぞ
賭けに出るようなものですから。
別に投資としての不動産を得るつもりはありません。
転がそうとか、儲けたいというわけではなく、
買い手が見つからず、
かといって相続した子どもも住めないような
いわゆる”負動産”を避けたいだけなのです。
そして現在、不動産価格は過去から見ても
うなぎ登りの一途をたどり、
すでに高止まりの状態です。
特にマンションは中古でも価格が高騰しています。
老後の資金としては不動産だけでなく
”預貯金”などの”動産”も重要です。
つまり、有り金全てを家の購入に
betするわけにはいきません。
現実的な予算の範囲で
将来売れ残らない土地を買う。
実際はそんなに難しいことではないはずですが
そこに所有権や再建築可能、
間取りや古さ、駅からの時間、
日照や通風などを考慮すると
なかなか決められないで苦しむことになります。
なお不動産価格の上昇がいつまで続くのかは謎です。
当面、都心部や好立地エリアでは高止まりか
緩やかな上昇が続く一方、
交通利便性の低いエリアは下落が予測されています 。
以前バブルがはじけた時、
地価が急落したきっかけは
日銀による利上げや、
不動産融資に対する総量規制でした。
今は状況が違うため、あの時と同じように
価格が急に下落する可能性は低いと思われます。
なので、自分の経済状態をしっかりと把握し
対応可能な範囲での不動産購入を心がけようと
夫婦で話していました。
社会情勢は変えられなくとも、
振り回されること無く用心深く動く……
そしてその慎重さが仇となり、
決められないまま月日は過ぎていったのです。




