10 増える物件リスト、混乱するメール
月日はあっという間に過ぎていきました。
でもこの当時は全然、焦ってもいなければ
迷いすらありませんでした。
”そのうちドンピシャな物件が出てくるだろう”と
気楽に思っていましたから……。
スーモなどの不動産サイトは、
気になる物件を個別にお気に入りとして
”ブックーマーク”できるようになっています。
なので夫婦ともに、条件が見合うものがあれば
片っ端から”お気に入り”として保存していきました。
これは気軽にできるぶん、あっという間に
かなりの物件数が蓄積されることになります。
さらには、ちょっとでも気に留まったような
”え、これ、本当に買う気ある?”
というのも混入してしまうことになります。
(しかしこういう物件も”売却済み”という表示に変わると
くそう、売れたのか……という気持ちになります。
内覧する気もなかったくせに)
私たち夫婦は一つ、新居探し用のメルアドを作り、
それを登録することで、
夫婦一緒に管理ができるようにしていました。
そうすることで、不動産会社からのメールを
時間がある方や気付いた方が返信することができ、
物件選びもいちいち報告することなく、
互いが選んだものを共有することが出来たのです。
気が付くと増えている”お気に入り”ですが、
夫婦でやはり価値観が違うらしく、
”これも候補にいれるんだ……”
というのがたくさんありました。
私はとにかく”立地至上主義”で、
交通利便性の高い(複数の路線が使える)駅の
しかも駅近を推していました。
夫は資産価値のある路線と土地面積を重要視し、
また建造物としての安全性も気にかけていたようです。
どちらも真っ当というか、
否定する要素はない条件なのですが
微妙なズレがあることは問題がありました。
私は起きて半畳寝て一畳、狭さは気にならず、
むしろ広すぎる家は避けたいとすら思っていたのです。
現在の家は収納たっぷりの4LDKと広い納戸。
しかし広ければ片付く、というわけではありません。
その広さをめいっぱい活用して散らかすだけなのです。
しかもその掃除や片付けをするのは私だけ。
さらに言えば、子どもたちはじきに巣立っていきます。
大学生の娘は就職、
高校生は息子は進学が近づいており、
家を出る可能性もおおいにあるわけです。
夫と猫2匹だけで暮らすかもしれないのに
あまりにも広い家を買って、
部屋とローンを持て余すくらいなら
コンパクトな家で充分……そう考えていたのです。
しかし夫の考えは違いました。
”建売の狭小住宅ではなく土地として考えた時、
(私たちが出る時にはすでに建物の資産価値はないため)
あまりにも狭いと買い手がつかない恐れがある”
”また”どこにでも行きやすい駅”よりも
不動の人気を誇る路線で購入したほうが間違いない”
夫婦それぞれの、この意見の相違は
本人たちだけでなく、不動産屋さんも
困惑させることになりました。
最小公倍数的には、
”複数路線が使える超人気路線の駅近で、それなりに広い”
という、かなりの高額物件となってしまいます。
とてもじゃないけど買えません。
どちらかだけならまだ良かったのです。
”駅近だけと狭小住宅”
”人気路線だけど駅から結構歩く”
みたいな物件なら結構ありますから。
ただ子どもたちから
”そもそも出ると決まったわけではない”
”家賃が高騰している昨今、就職しても家から通う”
と宣言され、部屋数は確保することになりました。
(内心ハリーポッターを見習って
階段下にでも部屋を作りたいところです)
結局お互いが”どのくらいまで譲れるか”を探りながら
物件を探していくことになりました。
そのため条件をなんとか該当しているだけなので
60点くらいの物件が”お気に入り”に羅列することになり、
「……見ても買わないな」
ということで内覧すらしないで終わる物件がほとんどでした。
全然、気に入ってなんかいませんね。
そして見てみたい物件はすぐさま
不動産会社に内覧の申し込みをするので
”お気に入りフォルダ”にキープする意味など
ほとんどありませんでした。
(最終的には間取りがヘンな”面白物件”まで入っていました)
そしてメールもあっという間に溢れてきます。
何故なら一度内覧を申し込んだ不動産会社からは
決まるまで何度も違う物件を紹介されることになるからです。
予算や間取り、家族構成、希望の駅などの条件だけでなく
どうして家を引っ越すのか、
なぜその土地に住みたいのか
そういったことまで聞かれます。
そして該当する(してないのもあるけど)物件を
次々と送ってくれるのです。
あまりに多くの不動産会社の方々と
物件案内や内覧前とその後のやり取りを行うため
「あれ? これってどの物件を問い合わせた会社だっけ?」
などと訳がわからなくなることもありました。
きちんとフォルダには分け、
メールの返信はできるだけ早く。
対応に追われても、絶対に送信先を間違ってはいけません。
また送ってくださった物件はきちんと拝見し
グーグルで位置を調べたり、ハザードマップで確認し
”ここがちょっと問題”という理由を添えて回答しました。
断る時こそ、理由をしっかりはっきり書かなくてはなりません。
そうしないと相手にはこちらがどんな物件を求めているのか
理解してもらうのに時間がかかってしまいます。
そもそもサラッと見て断るのは、人としてNGというか
最低限の礼儀は守った方が良いと思われました。
ちなみに、希望する駅の物件ばかり来るわけではありません。
同じ路線のもっと市街地から離れた駅や
価格帯は一緒だけど全然違う路線のもの、
ひいては”……なんでこれを私たちに?”というのまで
たくさん届いてきます。
しかしそれでも、内容だけはきちんとチェックしていました。
もしかすると、こちらが知らないだけで
良い場所があるかもしれないし、と考えながら。
……とはいえ、
一度も内覧に至った物件はありませんでしたが。
やはり自分で発掘したのが一番です。
なので毎日スーモやアットホームをチェックしていました。
対応と整理、そして検索に時間がかかり、
寝る前のひとときや休日が
パソコンの画面だけで終わった時の
虚しさといったらありませんでした。




