第三十七話 叔父への一言
応永三十三年(一四二六)十月 伊予国 忽那諸島
大内方の船団が、河野内訌の助勢として、伊予の湊に姿を現したとの報せが届いたのは、鶴丸の後見が定まって間もなくのことだった。
大内は、通春方への助勢を、正式に決めたという。こちらが既に肩入れしていた陣営と、大内方とが、同じ陣営として、顔を合わせることになった。
湊に並んだ船団の帆を、遠目に見たとき、わたしは、思わず、息を呑んだ。
赤地に、黒い印。
五年前、まだ怒和島に根を張ったばかりの頃、湊に一度だけ現れ、何も告げず、様子だけを窺って去っていった、あの見慣れぬ帆印だった。あのとき、孫兵衛の昔語りと、まとまりの薄れた本家と、この帆印と、三つの欠片を、紙の上に並べたまま、答えを出せずにいた。
「あの帆は」
伊佐次に、そう訊ねると、伊佐次は、事もなげに答えた。
「大内方の船にござります。何か、お気にかかることでも」
「……いや」
わたしは、それだけ答えた。五年越しに、一つの欠片が、ようやく、線に繋がった。大内は、あのころから、既に、この海のことを、静かに見ていたのだろう。忽那諸島の本家の弱まりも、そこに根を張ろうとしていた余所者の一党のことも、恐らくは、両方とも。何も語らず、何も動かず、ただ、機の熟すのを待っていた。その辛抱強さに、いまさらながら、薄ら寒いものを感じた。
このことを、弥九郎には、まだ、話さなかった。話したところで、いま、何かが変わるわけではない。ただ、頭の中の帳に、静かに、一行を書き加えただけだった。大内方、五年前より、この海を見ていた。
このことを、弥九郎に伝えると、しばらく、考え込んでいた。
「大内が、通春方に付いたか。これで、こちらの勢いも、いっそう強まろう」
「はい。ただ、大内方との縁が深まれば、それだけ、こちらの動きも、大内の意向を無視できなくなりましょう。頼れる後ろ盾は、同時に、こちらを縛る足枷にもなりまする」
弥九郎は、それを聞いて、深く頷いた。
「何事も、両刃だな」
「はい。そういうものにござります」
その大内方の船団の中に、思いがけない名を、わたしは、伊佐次の報告書の中に、見つけた。
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「大内方の名簿に、こう記されており申した。麻生盛久」
伊佐次は、ただ、名簿に連なる名の一つとして、それを読み上げただけだった。その名の重みを、伊佐次自身は、何も知らない。だが、その名を聞いた瞬間、わたしは、しばらくのあいだ、動けなかった。
盛久。父の異母弟。かつて、大内方に通じ、島門を裏切り、家を売った男。「麻生を残すため」という、その一言だけを残して。その裏切りが、父を死なせ、兄を死なせ、島門を焼け落とさせる、直接の引き金になった。あれから、十年以上の歳月が流れていた。それでも、その名を目にした瞬間、あの日の記憶が、鮮やかに、蘇ってきた。
「大内方の陣に、盛久殿が」
「はい。芦屋の麻生宗家の一員として、名を連ねておられるとの由」
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わたしは、頭の中で、素早く、数を組み直した。大内方が、通春方への助勢として、この地に来ている以上、盛久と、顔を合わせる機会が、いずれ、訪れるかもしれなかった。
その可能性を、頭の中で数えながら、わたしは、自分の胸の内を、あらためて確かめた。復讐の機会。その言葉が、頭の隅に、静かに浮かんだ。
父を死なせ、兄を死なせ、島門を売った男が、いま、目の前に現れようとしている。この機を使えば、あの日の無念を、晴らすことができるかもしれない。いま、こちらの手には、六島を治め、因島を固め、河野内訌にも影響を及ぼすだけの力がある。かつて、なす術もなく、家を焼かれ、荷として売られた小娘とは、もう、まったく違う立場に立っていた。
その力を使えば、盛久を討つことなど、容易いはずだった。だが、その考えを、頭の中で、何度も、数として組み立て直すたびに、どうしても、しっくりとこなかった。父も、兄も、それで戻ってくるわけではない。島門も、元の姿には戻らない。ただ、こちらの手が、血で汚れるだけだった。
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だが、しばらく考えて、わたしは、その考えを、静かに退けた。
盛久を討ったところで、何の利があるだろうか。大内方との縁は、これから、河野内訌において、大切な足がかりになる。その大内方の一員を、私怨で討てば、こちらの立場は、一気に危うくなる。
利がない。それが、頭の中で出た、唯一の答えだった。だが、その答えを出すまでに、頭の中で幾度も、あの日の光景を、繰り返し思い浮かべた。焼け落ちる島門の館、父の亡骸、兄の亡骸。その一つ一つを、数として処理し終えるまでに、思いのほか、時がかかった。
数日後、大内方との会合の場が、実際に設けられた。弥九郎に付き従う形で、その場に、盛久も、姿を見せた。
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その顔を、一目見た瞬間、わたしの息が、止まった。
以前と比べ、随分と髪に白いものが増え、頬もいくらか痩けていた。それでも、あの日、島門の館で見た顔立ちが、確かに、そこに残っていた。焼け落ちる館、父の亡骸、兄の亡骸。その一切の記憶が、一瞬にして、頭の中を、駆け抜けた。指先が、微かに、冷たくなった。
だが、その動揺は、束の間のことだった。息を一つ吸い、頭の中の帳を、素早く開き直す。いまは、島門の小娘ではない。六島を治め、河野内訌にも関わる、二神の一党の女だった。その自覚が、乱れかけた心を、静かに、元の位置へ、押し戻した。
「久しいな、千代殿」
盛久は、そう言って、こちらへ、深々と頭を下げた。その顔には、幾年もの歳月が、確かな皺を刻んでいた。
「盛久様も、御健勝そうにて」
わたしは、丁寧に、そう挨拶を返した。声は、既に、落ち着きを取り戻していた。自分でも、その切り替えの速さに、少し驚いていた。もっと、長く、心が乱れるものだと、これまで、ずっと、そう思い込んでいた。
盛久は、しばらく、こちらの顔を、じっと見つめていた。
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盛久は、そう言いながら、こちらの供の者たちの並びを、ゆっくりと見渡した。
「そなたが、こうして、瀬戸内で、確かな力を築いておるとは、風の噂で聞いてはおったが、まさか、これほどとは」
その言葉に、わたしは、何も答えなかった。
「わしを、恨んでおろう」
盛久が、ふと、そう言った。その声には、覚悟したような、静かな響きがあった。
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「恨んでは、おりませぬ」
わたしは、そう答えた。
盛久は、少し身を乗り出して、そう問い直した。
「なぜ、恨まぬ」
盛久の問いに、わたしは、しばらく、言葉を選んだ。
「恨んだところで、何も変わりませぬ。父も、兄も、戻ってはまいりませぬ。島門も、二度と、あのままの形では、戻りませぬ。恨みは、ただ、こちらの心を消耗させるだけにて。それより、いま、目の前にある勘定を、正しく組むほうが、よほど、意味がござります」
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その場に居合わせた、大内方の縁者の一人が、思わず、口を挟んだ。
「なぜ、報いてやらぬ。これほどの力を持ちながら」
わたしは、その者に、静かに、目を向けた。
「利がないからにござります」
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その一言に、場が、しんと静まり返った。周りの者たちが、思わず、顔を見合わせていた。
盛久は、しばらく、こちらを見つめていた。その目には、驚きと、そして、どこか、納得したような色があった。
「そなたは、変わらぬな」
盛久が、そう漏らした。
「変わりませぬ。わたくしは、いつも、利で動きまする」
その答えに、盛久は、微かに、笑った。
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「わしも、家を選んだ。あのとき、選んだ道を、いまも、悔いてはおらぬ」
盛久は、そう続けた。
「だが、そなたが、こうして、恨みではなく、利で、この場に立っておることに、正直、驚かされた」
「驚かれるようなことでは、ござりませぬ。ただ、勘定をしたまでのこと」
「島門のことは、いまでも、時折、思い出す」
盛久は、そう続けた。その声には、これまでにない、静かな重みがあった。
「兄上のことも、家村のことも。あのとき、違う道を選んでおれば、と思わぬ日は、ない」
その言葉に、わたしは、しばらく、何も言えなかった。盛久が、こうして、あの日のことを、いまも胸に抱え続けていたとは、思ってもみなかった。
「それでも、盛久様は、家を選ばれた。その一貫性だけは、変わらぬのでしょう」
わたしが、そう言うと、盛久は、深く頷いた。
「そうだ。悔いても、選び直すことはせぬ。それが、わしの生き方だ」
盛久は、そう言い切ってから、少し、遠い目をした。
「そなたも、いずれ、そういう生き方をすることになろう。選んだ道を、悔いても、選び直さぬという生き方を」
その言葉に、わたしは、しばらく、答えられなかった。既に、自分は、その生き方を、幾度も、繰り返してきたのかもしれなかった。弥九郎への進言、綾への策、鶴丸を担ぎ出す決断。どれもが、選んだあとには、決して、後戻りできないものだった。
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その遣り取りを、弥九郎が、少し離れた場所で、静かに見ていた。腕を組み、口を挟まぬまま、最後まで、静かに見守っていた。会合が終わったあと、二人きりになると、弥九郎は、わたしに、そう訊ねた。
「あれで、よかったのか」
「はい。あれで、よろしゅうござります」
「本当に、恨んでおらぬのか」
その問いに、わたしは、しばらくのあいだ、答えに詰まった。
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「分かりませぬ。恨んでおるのかどうかも、正しくは、分かりませぬ。ただ、恨みを晴らすことに、何の利もないと、そう判じただけにて」
弥九郎は、それを聞いて、しばらく、黙っていた。
「お前らしいな」
その一言に、わたしは、微かに笑った。
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翌朝、綾のもとを訪ねた。昨日の会合のことを、かいつまんで伝えた。大内方の中に、かつて島門を裏切った叔父・盛久が、名を連ねていたことも、初めて、綾に明かした。
綾は、それを聞いて、しばらく、黙っていた。
「そのような御方と、対面なさったのですね」
わたしは、静かに、頷いた。
「はい」
「辛くは、ござりませなんだか」
その問いに、わたしは、少し考えてから、答えた。
「辛い、というより……不思議な心地にござりました。あれほど憎むべき相手を前にして、憎しみよりも先に、勘定のほうが、動いておりました」
綾は、機の手を止めて、それを聞いて、しばらく、黙っていた。
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「千代殿らしい、と申し上げてよいものか、それとも」
綾は、そこで、言葉を切った。
「それとも、と申されますと」
「憎しみを、正しく持てぬことも、また、一つの傷なのではないかと、わたくしには、そう思えまする」
その言葉に、わたしは、深く、胸を突かれた。憎むべき相手を前にして、憎しみよりも勘定が先に立つ。それを、これまで、自分の強さだと、そう思い込んでいた。だが、綾の言葉は、その強さの裏にある、何か、埋められない空白を、静かに、言い当てていた。綾の目には、いつも、こちらが見落としているものが、はっきりと映るらしかった。
「わたくしには、まだ、よう分かりませぬ」
わたしは、正直に、そう答えた。
「分からぬまま、それでよろしゅうござります。いつか、分かる日が、来るやもしれませぬ」
綾は、そう言って、いつもと変わらぬ、優しい微笑みを浮かべた。
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綾の部屋を辞し、その足で、幸松の様子も見に行った。庭先で、幸松が、他の子らに、字を教えているところだった。秋の陽射しが、その光景を、柔らかく照らしていた。
「幸松、少し、よいか」
わたしが、そう声を掛けると、幸松は、すぐに、こちらへ駆け寄ってきた。
「千代様、何か」
わたしは、少し声を落として、そう切り出した。
「昨日、大内方の会合で、かつて、こちらを裏切った叔父と、対面した」
その話に、幸松は、字を教える手を止め、少し驚いた顔をした。
「その御方を、討たれなんだのですか」
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わたしは、少し考えてから、正直に、答えた。
「討たなんだ。利がないと、そう判じたゆえに」
幸松は、それを聞いて、しばらく、考え込んだ。
「それがしには、まだ、難しゅうござりますが……憎い相手を前にして、それでも手を出さぬというのは、よほどの強さが要りましょう」
「強さ、というより、勘定にすぎぬ」
わたしが、そう答えると、幸松は、少し首を傾げた。
「勘定と強さは、同じものではござりませぬか。数を読み違えぬことも、一つの強さにござりましょう」
その言葉に、わたしは、少し、虚を突かれた。幸松の、その素朴な物言いが、思いのほか、深く、胸に響いた。
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その日の夕方、松吉が、一通の文を手に、こちらへ駆け込んできた。
「千代様。赤間関から、妙な文が届いており申す」
「赤間関」
聞き覚えのある地の名に、わたしは、思わず、手を止めた。松吉が差し出した文は、粗末な紙に、拙い、しかし丁寧な字で書かれていた。字の癖から、書いたのは、文を頼まれた誰か別の者だと、すぐに知れた。
「読み上げてくれ」
わたしが、そう言うと、松吉は、文に目を通し、少し戸惑った顔をした。
「差出人は、名を、さよ、と」
その名に、わたしは、しばらく、動けなかった。
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「読んでくれ」
わたしは、声を絞り出すようにして、そう言った。松吉が、ゆっくりと、文を読み上げはじめた。
赤間関の湊で、瀬戸内から来た商人の噂話に、「二神の一党」「千代という名の女子」という言葉を聞いた。潮の高さを毎日数える、変わった女子だったと聞き、もしや、と思うて、恥を忍んで、文をしたためた。近ごろ、体の具合が思わしくなく、床に伏せる日が増えている。もし、あの姫様であれば、一目、お会いしとうござります。もし、人違いであれば、どうか、お許しくださいませ。
文の終わりには、覚えのある、あの、少し訛った言い回しの残り香が、拙い代筆の字の向こうにも、確かに滲んでいた。
「千代様」
松吉が、こちらの顔色を窺いながら、声を掛けた。
「知っておる者か」
「島門におった頃、傍にいてくれた女子だ」
わたしは、そう答えるのが、精一杯だった。島門が焼け落ちたのち、荷として引き離されて以来、一度も、消息を確かめようとしなかった。確かめる余裕がなかったと、これまで、そう自分に言い聞かせてきた。だが、本当は、余裕がなかったのではなく、確かめることそのものを、頭の帳から、外していただけなのかもしれなかった。
「体の具合が、よろしくないと」
松吉が、そう続けた。
「迎えを、出しとうござります」
わたしは、はっきりと、そう言った。
「弥九郎様には」
「わたしから、話す」
その夜のうちに、赤間関へ向かう船の手配を、松吉に命じた。何を、どう迎えればよいのか、頭の中で、幾度も、算段を組み直した。だが、数を組もうとするたびに、さよの、あの、屈託のない笑い声が、頭の隅に、蘇ってきた。数では、どうにも、うまく捉えられない何かが、そこにあった。
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夜、皆が寝静まったころ、灯りのもと、独り、帳を広げた。
盛久様、大内方の一員として、河野内訌に参陣。会合にて対面。恨みを晴らさず、利で処理す。大内方との縁、これにて、いっそう固まる。さよより文。赤間関にて臥せっておる由。迎えの船を出す。
書き終えて、しばらく、その一行を見つめた。父の仇と呼べる男を、目の前にしながら、何もせず、ただ、利を計算しただけだった。その自分の在り方が、正しいのか、それとも、どこか、欠けているのか、いまだに、答えは出なかった。
綾の言葉を、もう一度、思い出した。憎しみを、正しく持てぬことも、また、一つの傷なのではないか。その指摘は、これまで、自分が、強さだと思い込んでいたものの、裏側を、静かに、しかし、確かに、暴いていた。
あの日、父の死を、兄の死を、島門の落城を、幼い自分は、何も変えられなかった。言っても、届かなかった。あの無力感が、いまも、心のどこかに、深く根を張っているのかもしれなかった。復讐という形で、あの日の無念を晴らすことを、頭のどこかで、恐れているのかもしれなかった。晴らしたところで、あの日失ったものは、決して戻らないという事実に、正面から向き合うことを。
幸松の一言も、頭の中に残っていた。勘定と強さは、同じものではないか。数を読み違えぬことも、一つの強さだ。その言葉に、少しだけ、救われる思いがした。数えることしかできない自分を、この子は、弱さとしてではなく、確かな強さとして、見てくれていた。
弥九郎の、あの、静かに見守っていた横顔も、頭に残っていた。あの男は、何も言わず、ただ、最後まで見届けてくれていた。その気配だけで、随分と、心強かったのだと、いまさらながら気づいた。口を挟まず、ただ傍にいる、というその在り方が、これほど確かな支えになるとは、これまで、正しく数えたことがなかった。
さよの文のことも、頭から離れなかった。盛久のことは、利で処理できた。だが、さよのことは、どう数えればよいのか、まるで見当がつかなかった。同じ、過去から届いた声のはずなのに、その重みは、まるで違う場所に落ちた。
外では、十月の澄んだ風が、いつまでも、静かに吹いていた。島門を失ってから、もう十年以上の歳月が流れていた。その歳月の重さを、あらためて、噛みしめずにはいられなかった。




