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②カツカレーの謎

「なあ、今の男、どう思う」


 司、礼二、克也の順に食べ終わり、しばらく無言のままそれぞれ茶を飲んだりおしぼりで手を拭いたりして時間を潰していたが、やがて静寂に耐え切れないように克也が言った。


 お前らはどう思う、今の男。カツカレーを頼んでいたぞ。


「まさか、と思ったよ」


 礼二が口を開いた。


「だって、カツドンヤでカツカレーを頼む人がいるなんて、信じられない。ありえないよ」

「しかし現実に起こった」


 続けて司も口を開いた。


「あの初老の男は確かにカツカレーを頼んだ。俺たち三人の前で、さも当然のように…こんなことがありえるとは」


 司は顔を伏せ考え込む。


「そんなにカレーが食べたかったのか?まさかニコイチとイクイクカレーが定休日ってことはないよな」


 克也の思い付きに他の二人ははっとした表情で顔を上げたが、礼二がポケットからスマートホンを取り出して操作すると、弱弱しく頭をふった。


「駄目だよ。今調べたら、両方とも今日は営業してる。昼休憩でもないね。今15時だけど営業中だよ」


 言って克也と礼二の前にスマートホンの画面を見せ付ける。そこには確かに営業中の文字が浮かんでいた。


「しかし、有り得ない」


 司が改めていった。


「繰り返すが、そもそもカツドンヤはカレーが不味いことで有名だ。どうしてもカレーが食べたかったから、なんて理由もない。両隣はカレー屋だからな。カレーを食べたかったらニコイチカレーかイクイクカレーに入店するはずだ。

 にも関わらずあの男は、あえてカツカレーを頼んだ。そんなこと、ありえないはずだが」


 しかし認めないわけには行かなかった。三人の見ている前で初老の男はカツカレーを受け取り、それを食べ終えたのである。


 なぜ男はカツカレーを頼んだのか。

 今や三人の頭はその疑問で一杯になっていた。

 重い沈黙が辺りを包む。

 腹をすかしていたところにカツドンヤに入り、それぞれ充分に腹を満たしたはずなのに、返って心は空虚に支配されたようだった。


 カツカレーを頼むなんてありえない、理不尽だ、起こってはいけない。

 三人が全員、苦い顔で目線を落とし、テーブルを見つめていた。せっかくの昼食が台無しにされた気分だった。


 たっぷり5分は黙っていたが、やがて一人が口を開いた。


「でも」


 口を開いたのは礼二だった。


「カツカレーを頼んだ理由、考えられなくもないかな」


 礼二が言った。

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