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陰り逝く日々  作者: 和之
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永平寺に行く6

「こうなったら単刀直入に言うけど、かおりの手術に輸血がいるの、あなたの血がいるの」

「あーあ、君は吸血鬼か」

「何とでもおっしゃい。同じ血で繋がっているのはあなただけなんですから」

「本当に俺の血がいるのか」 

「そうでなければここまで来る訳がないでしょう」

 言ってる事と反対に堂々と会える理由付けが出来た。とそんな表情だった。それにつられて朔郎は賑わう門前通りを素通りして近くの駅までタクシーを飛ばした。二人は私鉄駅から福井で特急列車に乗り換え、京都へ着くとかおりの居る病院へ向かった。妻と云う立場さえなければ、二人はこの道中ですべてのわだかまりを乗り越えてしまった。

 病院に着くと佐恵子は主治医と連絡を取りふたりは別室へ入った。そこで簡単な検査を受けて寝台に横たわり採血が行われた。

 終了後に佐恵子は朔郎にかおりに会うように勧めた。躊躇う朔郎を佐恵子は無理やり病室へ連れて行った。 

 かおりは眠っていたせいか感動も印象も薄かった。要するに親としての心構えが出来てなかった。それでもかおりを間近で見詰めて病室を出た。

 正幸はこんな時に親として何も出来ないのが堪らなく辛いと佐恵子に漏らしている。血の繋がりだけはどうしても自分ではてがえないと悔やんでもいた。かおりを通じてその先に見える糸が、正幸にはある種の不安を通り越して恐怖になるようだ。

 佐恵子の説明では、朔郎は正幸が俺の何に怖れているのか解らなかった。正幸の抱く影の部分が何なのか、佐恵子に尋ねられても今ひとつピント来ない。せっかく会ったのだからこれから四条に出ないかと誘ってみたが、佐恵子はかおりの様子と正幸の帰宅時間が気になり、今日はひと言詫びて断った。

 代わりに有美子の連絡先を聞いて朔郎は別れた。有美子に何を聞くのか気になったようだが、今日が今日だけに佐恵子は深追いしないようだ。


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