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陰り逝く日々  作者: 和之
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永平寺に行く3

「それは今も昔も変わらないんじゃないですか、答えをひとつだけ言って相手が全てを理解すれば、先生としての教育熱意は必要なくなりますからね。だからそれを伝える仕事は大変でしょう」

「仕事でっか。まあ教師も月給制ですからそうなるのか」

 男は割り切れなさそうな一言で、ここに来た理由わけがその顔から現れている。

 座禅と云うものは煩悩を消し去り、心を無にして悟りを求める。彼は迷いを消し去り子供達と直に向き合いたい、その為に来たと結論を述べた。

「これで教育実習生の頃に立ち戻れれば、そうなるとこの三十年はいったいなんだったでしょうね」

 そうですねと相づちを打ちながらも俺はその半分ほどか、しかも教職一筋の先生と転職を繰り返す朔郎では、取るに足らんかと日頃の優柔不断をさいなやんだ。

 みんな雑念を払う為に来ている。それに比べると俺の目的は無いに等しく、ただ安らぎしかなかった。座禅がどれほどの精神を統一させて無念無想の境地に導くものかは罰当ばちあたりな事にこの先生ほど期待していなかった。

夕方五時半の薬石(夕食)までに入浴を済ませて空いた時間で寺の中や境内を参拝した。薬石の時間になるとお堂の畳敷きに長テーブルに椅子に座って食べる。畳なのに椅子とはとまず驚いた。

 夕方六時半に座禅が始まり一時間後には座禅が組み終わると心安らかになった。それから法話を聞き雲水が修行する一年間の映画を見て夜の九時には開枕(消灯)となった。

翌朝は三時に振鈴(起床)整列して法堂はっとうで朝のお勤めが始まる。 老師のお話と雲水と僧侶があわせて百人ぐらいの読経が二時間ほど続いた。


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