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陰り逝く日々  作者: 和之
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永平寺に行く2

 朔郎が座禅の一夜修行に、永平寺に着いた時はとうに昼は過ぎていた。

門前通りには土産物屋や旅館に民宿、喫茶店等が店を並べていた。その門前の店で遅い昼食を済ませて通用門から行くと拝観受付があった。そこで参籠体験者ですと伝えて中へ入った。総受所で受付をして吉祥閣へ案内された。

寺の中は鬱蒼とした杉木立に囲まれて空気までもが静寂に漂っていた。仏心のない者には肌までが異質に感じ取り、心の準備不足で有ることはいなめない。

受付で対応してくれた雲水が案内してくれた宿泊の部屋は六十畳敷の部屋だった。雲水はそこで参籠の心得を説明し、今日の一通りの予定と寺の概要を説明すると部屋を出た。

 この部屋は天井も高くその分、寒気も漂っていた。先客は何人か居たがこの広さでは目立たなかった。窓からは永平寺川のせせらぎと鳥の鳴き声しか聞こえない。

 無人に近い青畳の荒野から男の声が聞こえた。男は六十に近く小太りで善良を絵に描いたような人物が近づいた来た。正にこの修行に相応しい人柄で自分とは不釣り合いに見えた。

 男は三十年近く教師をやっていると云って、朔郎に此処へ修行に来た心境を訊いて来た。朔郎は今の会社でリストラされたと適当に話した。

「そうでっか、リストラで会社を辞めはったんですか、それで心のリフレッシュに座禅をくみに来られたっちゅうわけでっか」

 朔郎が適当に話している内に話が逸れてきたが、まあ良いかと適当に相槌を打っていた。

「私は長年同じ教育方針でやって来ましたが最近の自己中心的な子供には参りましたわ。どうしたらいいか悩んだ末にここへ来たんです。とにかくうわべばかり頭に入れて中々物事の本質を理解させるのに苦労するんですよ。数学のようにひとつの法則に基づいて成り立っていれば、ひとつだけの答えを説明すればいいが人間社会を教えるのは難しくてねえ」

彼は答えが一つしかない理数系は、なぜそうなるのか解らず苦手だった。自分なりに考えが導ける法則が気に入って、答えのない自然を相手にする方が楽だった。


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