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陰り逝く日々  作者: 和之
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永平寺に行く1

 永平寺は京都から北陸本線に乗って、敦賀から長いトンネルの向こうにあった。このトンネルが実に長かった。かおりに会う道のりのように。新幹線を除く在来線では一番長いトンネルだった。

 朔郎さくろうの乗る特急列車は湖西線を軽快に琵琶湖を右に眺めながら近江路を北へ向かって走っていた。座乗の朔郎は逆に鉛を飲み込んだように心がズシリと重かった。

 重くのしかかっているのは、狭山からまだ見ぬ娘に会ってやれと云われた言葉だった。

 北村はこの忠告をどう解釈したのか、後日に一泊二日で福井の永平寺に座禅修行に行くと言い出すに至っては「解らん男だと」狭山は首を捻りながらも見送った。

 朝に発った特急列車は冬の足音が迫る北近江から敦賀を通り長い北陸トンネルになる。夜行列車ならいざ知らず、昼間の列車ではこの暗い長いトンネルは過敏な神経に堪えた。

 この日の座禅は「娘に会え」と言う狭山の忠告が胸に響いて、それに従って先ずは心の準備、ウオーミングアップすべく選んだ行動だった。先ず前途不安に駆られ、列車の軋む音には眠りを妨げられ、亡者の群れが舞い上がる錯覚にも囚われた。

 北村が十四年もほったらかしたのでは無く、彼女が一切の痕跡を断ったに他ならない。なのにこの亡者の群れは俺に襲いかかるんだ。佐恵子の方へ行けと追い払っても付きまとう。

 心の闇の中での長い格闘の末にやっとトンネルを抜けると、陽射しが列車内に満ち溢れてホットひと息付けた。

 朝に発った特急列車は昼前に福井に着いた。そこから私鉄に乗り換え更にバスに乗り換えて永平寺に向かった。朔郎の本音は狭山の忠告より前から、厳密に言うと佐恵子と再会して最初にさおりが気になった。多分、狭山はそんな意地っ張りな彼の心を見透かしてわざわざ道筋を立ててくれた。ありがたかったが素直になれずへそを曲げて仕舞った。それが今度の座禅修行だから身が入らないのは当然の成り行きだ。嫌な性分と諦めるしかない。


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