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陰り逝く日々  作者: 和之
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狭山家に寄り道6

「だけど僕は綾子からかおりに会った事は何も聞いていないよ」

 そこまで綾子に洞察力が有ったとは思えなかった。

「そうでしょうね。朔郎さんに語れるほど、かおりちゃんのイメージを掴めてないから、意見も相談も出来ないでいる綾子さんの身になってあげなけゃあ、私はダメだと思う」

 多恵はしんみりと語った。

「要するに最初の危機は二人の機転で回避したが二度目はかおりちゃんがネックになったんじゃないか」

 狭山の解釈は間違っている。まだ言葉も喋れない子がどうして俺と佐恵子との仲に割り込めるんだ。逆だろう、佐恵子はかおりの為にも自我を捨てて妥協点を探る努力をしないとダメなのに、一足飛びに消えて仕舞うなんて間違っている。

「気が動転してもかおりのために、彼女は正しい判断をすべきだろう」

「それはお前にとっての判断だろう。佐恵子さんには彼女なりに、しかし公正さを欠いたが本人には妥当と思える判断をした」

 狭山は推測のまま断定している。

「彼女はかおりちゃんを含めて判断したが北村は子供を無視して真理を探った」

「オイ無視はひどすぎる」

「じゃ少しでも考えたか」

 朔郎は絶句せずにはおれなかった。いったい我が子にこの時点でどれほどの感情を、いや一個の人格を捉えていた。それでも非は佐恵子にあると言い切れるのか。佐恵子と共に乳飲み子のかおりにも等しく寄せるべきだ。とふたりの子育で格闘した狭山夫婦の認識だった。

 心の基礎段階の子にこそ強い絆を持つ必要がある。この段階で子供はお前に百パーセントの信頼、絆を求めている。しかし子供の発達と共にお前への支持率は下がり始めるだろう。何故なら相手が人格を持ち始めると客観的にお前を評価し始める。それで自分を飾るか、ありのままをさらけ出すか、そこはお前の勝手だが。この渦中で自立心零パーセントの子供を優先すべきところを完全に無視した。聞こえが悪いなら怠った。

 狭山はあの時の判断をこうしてまとめ上げて、それを重々承知の上でかおりちゃんに会ってやれと忠告した。

 


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