狭山家に寄り道5
「それでも北村、お前はかおりちゃんとの血の繋がりは一生付きまとうんだ」
子供が出来ればふたりの愛情の半分は子供に注がれると云うが、あの状態では親子の情を求めるのは北村には酷だった。
多恵はそれでも必死なって探し求めなかった北村を非情だと問い詰めた。非常なのは佐恵子の方だ。あの時も狭山は多恵には言って聴かせていた。そもそもこれは二回目の出来事だ。一回目は正幸と云う男のちょっかいが原因だったらしい。
「この前辞めた会社に来る前は、佐恵子さんの友達の有美子さんが二人の仲をかなり説得してくれたんだと言っていたなあ」
「お互いにあの時はとことん話し合えた」
何処まで聞き留めたかは別だが。
「それで佐恵子さんが折れたんだなあ」
「そのつもりだ。だって彼女が全面的にやったことでこっちには全くの落ち度がない」
彼は苦々しく言い放った。
「そうだなあ、写真展の作品作りに出掛けた留守中の出来事で、しかも佐恵子さんの両親を納得させる為の写真展だった。北村にすれば寝耳に水の出来事だったんだ」
二回目は全く有美子さんは関与出来ないほど突然すぎた。誰の目にも触れずに雲隠れしたのだ。多恵の言う子供の事を考えてないのは当てはまらない。あの時は俺も相談を受けたが全ての意見を無視して、ただ帰ってくれるのを待つ北村を責められなかった。
「だってあたしは最初の出来事は一切知らなかったんですから、それにしても朔郎さんは佐恵子さんのためでなく、かおりちゃん為に行動すべきだったわよ。そこは間違ってるわ」
「ウ~ん、そこは難しい所だなあ、まだ乳飲み子だ、子供に関してやはり彼女に責任がある」
狭山は言い訳の下手な北村を代弁した。
「じゃ子供のために我慢しろって言うの。まだ人権が未熟な乳飲み子だからこそ双方がこの場合は朔郎さんが探しに行くべきなのよ。一番身近な人の責任です。でも、子供がいなければ話は別でしょうが子供に関しては取り違えてる。佐恵子さんが意志の強い人なら目的をかおりちゃんに変えるべきで、朔郎さんは元に戻す努力をして娘さんを捜すべきよ。その上で改めて二人で子供の将来を考えて最良の道を探す。どちらも無視するのは良くないわ。この答えを見つける為にも朔郎さんはかおりちゃんに会うべきでしょう。どっちが正しかったか、同じ女性であり将来の母親として綾子さんはそれを確かめに行ったと思う」




