狭山家に寄り道3
「今更蒸し返しても仕方がないだろう。もう時効だ十四年も経っている、それはかおりちゃんを見れば分かるだろう。それよりもお前より先に堀川がかおりちゃんに会ってる方が俺にはやりきれんなあ。……それでも親か」
「親は正幸だ。俺は佐恵子に因って傍観者にされてしまったんだ、俺はあの女によって振り回されたんだ。もう若くないから綾子と静かにくらしたい」
「それは本音か、ならなぜ向こうへ行ったり彼女が展示会に来たりするんだ」
更に狭山は苦笑いして。
「お前は品のいい女には弱いからなあ」と付け加えた。
結局この男はどっちも付けず、ただ彷徨っているだけで、ここへあてもなくふらっとただ寄り道したに過ぎない。それが証拠に何度聞いてもノラリクラリとしか答えられない。
「それより子供は大きくなったなあ」
さっきの狭山の子供に朔郎は思いを寄せた。
「ほう、言われればそうだが、日々毎日見ていると気が付かないと云うより子供に追われっぱなしなんだ。だから子供が時間の物差しみたいに見える時もある。物差しと言えばかおりちゃんだが」
「かおりちゃんがどうかしたの」
食器を洗い終わった多恵も食卓にやって来た。
「堀川から聞いた話を聞かせてやれよ」
多恵も一緒にビールを飲み始めた。
綾子さんは友人と二人で北山のブティックを探索の途中で店に行くかおりさんを見つけて店を突き留めた。店に居る彼女はどちらかと云うと雰囲気は北村さんに似て物静かな印象を受けたらしい。何しろひと言も喋っていないから話し出すとまたイメージが変わるかも知れないと云っていた。
「それだけか」
多恵の説明に物足りなさを感じて狭山が北村の代弁をしている。
「朔郎さんはどうなの?」
自分の娘の話にまったく聞き流している北村に多恵はカチンと来ているようだ。
「経緯はどうであれ親には違いないんでしょう」
「親と言っても乳飲み子のまま別れたからピンとこないんだろう」
狭山が苛立つ多恵の間に入った。
「もう、あなたが弁解する事はないでしょう」
多恵の剣幕に北村は慌てた。
「そ、そりゃそうですが……」
「多恵、北村に責任はない。向こうが一方的に行ったんだから」
「でも原因を作ったのは北村さんでしょう、それとも佐恵子さんの方なの?」
「彼女は何も言わなかったから俺には解らんよ」
この言葉を朔郎は十四年問い続けた結果、ぶっきらぼうな言い方になった。




