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陰り逝く日々  作者: 和之
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狭山家に寄り道2

「そうだなあ、そんな素振りまったくなかったからな」

 さっきも電話でやり取りしたが堀川はいつもと変わらなかった。 

 その内に多恵が夕食をテーブルに並べ始めて、食卓に料理が揃うと子供を呼んでから食べ始めた。

 食べ始めた二人の子供を見るといやでも俺も歳を取ったと自覚させた。その内に男の子がとんでもない事を始めた。

「姉ちゃん食べへんのか」

 中学生の長男が箸の進まない姉のおかずに箸を伸ばした。狭山が静観するところを見るとこれが日常的なのかと無言のまま納得した。

「やめて! 人のんまで手つけんといて。お母さん、怒って」

「これ隆夫、お姉ちゃんにちょっかい出したらあかん、お姉ちゃん今、大事な時やさかい、静かに早く食べなさい」

 叱られた隆夫は黙々と食べ出した。男の子は今度は狭山に箸で無く言葉を出した。

「お父さん新しいゲームソフトが欲しいんだけど」

 この子の活溌さにさっきまでの落ち込みが飛んでいきそうになった。

 高校受験を控えた姉は箸を止めて、そんな弟を羨望の眼差しで見ていた。

「だけど何だ。お姉ちゃんを見ろ。お姉ちゃんの受験が終わるまで我慢しなさい」

 多恵も長男を戒めて姉を気遣った。朔郎にとっては見慣れない光景だが、現実の家族のあり方を目の当たりにして戸惑った。

 食事が終わると子供達は部屋に戻っていった。後片付けが終わった多恵もキッチンに戻り再び食卓に静寂が戻った。

「しかし賑やかな食事だったなあ、いつもこうなのか」

「まあな、上の子は高校の受験で少し過敏になってる。下の子は気楽なもんだ丁度一年空いているからなあ。まあ家族と云うもんはこういうもんやなあ」

 狭山は気乗りしない北村に視線を注いだ。

「それより今日来たのは何か訳ありなのか……」

「いや別に大した事はないよ」とまた繰り返した。

「そうか。……仕事はどうだ。見つかりそうか」

 言いたいことはほっといても、その内に俺には言うだろうとすぐに切り替えた。

 北村は浮かない顔で首を横に振った。

「そうか。しかし堀川は面倒見がいいからなあ」

「……」

「いやに今日は口が重いなあ」  

 そう言ってビールを勧めながら狭山のこのひと言は随分と気分を楽にさせてくれた。

「狭山、俺は昔に正幸とある約束をしたってことは前にも云ったなあ、その時お前はいかれてると云ったっけ」

「例の約束だろう、だがその結果お前は佐恵子さんを失ったンだ」

「果たしてそう言い切れるか、正幸に言いくるめられたと」

 諦めの悪い男だ、いやしつこい男なのだろう。


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