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陰り逝く日々  作者: 和之
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狭山家に寄り道1

 綾子は佐恵子に会った事を匂わせていたがハッキリと言わない。気になる朔郎さくろうには、今ひとつこちらから問い詰めるだけの根拠(理由)が見付からず、気持ちが定まらないまま独り彷徨さまよい歩いた。

 秋のつるべ落としは気温までも急激に下げ、肌の温もりが優しく感じられた。肌の温もりが狭山の方角に足が勝手に向き、途中から地下鉄御堂筋線に乗り換えた。

 通勤時間帯を過ぎると混雑は緩和されるがそれでも込んでいるのが地下鉄御堂筋線だった。 

朔郎は夕食時に狭山のマンションのドアをほとんど無意識に叩いた。

「まあ珍しいひと」と応対に出た多恵が声を掛けるほど狭山の自宅へ来るのは五年ぶりぐらいか、いやもっと前かも知れないほど佐恵子が消えてから足が遠のいていた。

「ご無沙汰しています」としか言いようのないくらい彼女とは久し振りだった。

 さあ上がって上がってと彼女は突然の訪問を歓迎して、そのままダイニングテーブルへ案内された。

「なんだお前か、どうしたんだ急にやって来て、まあ座れ」

 突然に現れた北村に狭山の顔は何か訳ありそうな感じを汲み取った。

「丁度食事の支度をしていたところで、一緒に召し上がっていって、まだでしょう」

 それまで呑んでいて下さいと多恵はビールとポテトチップスを用意してキッチンへ行った。

「なんだ急に、まあ後で話を聞こう」

 狭山は食器棚からコップをふたつ用意してテーブルに置いた。

「堀川とケンカでもしたのか」

 狭山はふたつのコップにビールを注いで一方を北村に渡した。

「いやそうじゃない」

「そうか、とりあえず乾杯するか」 

「何に?」

 狭山がつまらん事を聞くなと顔をしかめると、まあいいかと朔郎はコップを合わせた。乾杯の後で狭山が耳打ちして来た。

「俺の留守中に堀川が来ていた。あいつ北山に在るブティックに行ったらしい」

綾子は北村の写真展で佐恵子と顔だけは合わせている。

「多恵の話ではかおりちゃんにも会ったようだ。もちろん喋っていなくて遠目で見たらしい」

「何しに行ったのだろう?」

狭山は北村の独り言に付き合っていられんと云う顔してビールを一口飲んだ。

「お前、それで来たんじゃないだろう、多恵の話ではそんなに深刻でもなかったようだからなあ」

 つまみが合う合わないは別にして、大人二人がポテトチップスでビールを呑んでいる。


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