就活3
綾子はとにかく朔郎と一緒に彼のアパートへ行った。六畳と四畳半のダイニングと別に風呂とトイレの付いた部屋だった。それは一七年前に佐恵子が見つけたアパートだ。
朔郎が離婚したのは会社の多くが知っていて住所も変えていない事も知っていた。
最初に彼の部屋を見た綾子は、前のままで本当に面倒くさいのかそれとも未練がましいのか見当がつかなかった。納得するより呆れていた 。当時の物を何も変えずそのまま使っていて一人暮らしには目障りな物まであった。
「邪魔な物が多いわね」
別れた妻がほとんどの物をそのまま置いて行って仕方がないと朔郎に言われた。
「だったらサッサと処分すれば良いのに、これじゃあ部屋が狭すぎるわ」
綾子は朔郎の会社に二年前に入って来た。それが二ヶ月前の送別会で酒に溺れた朔郎を見てから母性本能がどっと吹き出して、無視できなくなった。
「何か一緒に暮らしてくれそうな口ぶりだなあ」
綾子は入社以来、朔郎には愛嬌を振りまいていた。彼はその延長で此処でも軽いノリで言わせた。
「職もなくぶらぶらしている人とやっていけると思ってんの」
綾子は本気で言っていないのは眼を見れば分かった。しかし半分は嘘でもないことも伝わって来た。やはり生活を考えると不安なのだ。
「それに付き合ったのはまだ二ヶ月よ。そんな言葉はよしてよ」
彼女まだ新鮮な気持ちを持続したかった。
「会社では二年も一緒じゃないか」
「同じ職場に居るからそう云う事になるわね。……それより仕事の事を考えてんの」
綾子も軽い気持ちで言っているのは分かったが、今の朔郎には最大の不安であった。それを指摘されるとやはり気が重くなる。
彼は窓際に座り込んでけだるそうに外を眺めた。彼のいい加減な態度にむかっと来たが、彼女は掛ける言葉を失い出直すことにした。
送別会から綾子は朔郎のアパートを頻繁に訪ねるようになったが今日も泊まることなく帰った。




