就活2
翌朝、朔郎は昨夜の酷態を悔いた。己の弱さをさらけ出した事を悔いたのである。そして二週間後にまた繰り返していた。
「あんな悪酔いしたのは二十年振りか……」
遠く生駒の山並みを見ながら呟いた。
電話で求人を断られたあと朔郎は暑い陽射しが残る夕暮れの御堂筋を歩いた。綾子との待ち合わせ場所である心斎橋に向かって歩いた。
以前は会社のあるビルに向かってひたすら歩いた。同じ道を今日は定まらぬ歩幅で歩き続けた。行き交う人々にすれば彼の歩幅は歩道での人の流れを乱していた。
「俺は十七年間、何の為にこの道を歩き続けていたのか……」
ぼやき続ける朔郎の前にヨレヨレの普段着の五十絡みの男が眼に止まった。彼は自転車の荷台に寄り掛かりくわえ煙草のまま新聞を読んでいた。
「何して喰ってるんだろう?」
仕事を辞めてからの朔郎は暇な人を見つけると口癖の様に浮かんで来る言葉だった。その時に同じ様な視線に気付いた。
「生気のない人ね」
視線の先に立っていた綾子が笑いながら言った。
「まあ仕方ないわね、ずっと部屋に居ればたまにはお陽さんに当たらないと葉も萎れるから」
「俺は観葉植物か」
朔郎は肩を並べて歩き出した綾子に向かって愚痴を溢した。
「仕事、探してるの?」
綾子は世話焼きな方である。だがそれも三十に近い女だと疎ましく感じる事が多分にあり朔郎もそう思った。だが此の考えは、送別会で悪酔いしてから変わった。送別会が終わると手のひらを返すように厄介払いする中で、綾子一人が介抱してくれた。地獄に仏ほどでなくても彼女も悪くないと、いや望ましいと気持ちが一変した。
「探してるよ」
成り行きで答えた。
「合うのがないの?」
「難しいね、選り好みしなければ割と有るんだが……」
「じゃあ取りあえず繋ぎで決めれば」
「もう若くはないんだよ。歳なんだ」
彼はパソコンを使ってイラストやデザインを作る技術職である。カメラのレンズを通して決めていた構図がパソコンに置き換えられただけの平凡な技術職であった。芸術的な物は別にして、この人でなければ出来ないと 云うものでもなかった。この手の職人は人件費を抑える為に若手を採用した。
「じゃあ仕事はないの?」
「肉体労働ならあるよ」
「じゃあどうするの」
「一、二年は失業保険と退職金でなんとかなるが……」
彼はその先を詰まらせるとそのまま顔を曇らせて黙ってしまった。




