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陰り逝く日々  作者: 和之
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佐恵子3

 地下鉄を降りて秋の陽射しを一杯に浴びて北山通を歩き出すとやっといつもの自分に戻れてほっこりとした。

 いつも独りだった朔郎に友人がいる事を知ったのは、珍しく友達と一緒にいるのを偶然に見つけてからだ。私は思わず話しかけると朔郎は紹介もせずにすぐに彼とは別れて仕舞った。だから単なる同じサークル活動の友人と思った。でも話を聞くうちに高校時代からの友人で、しかも別の大学生だと知って驚いた。

 友人は経済に強い私立の大学生だった。朔郎の文学部志向はその友人の影響だと聞かされてまた驚いた。いったいこの二人はどういう友人なのだろうと興味を持つが、関心を持てば持つほど朔郎はその友人を遠ざけてしまった。

 スッカリ話題にも上らなくなった日に、朔郎は友人の正幸を全く突然に紹介したのだ。それからは成り行きで三人揃っても正幸を急に帰す事は無くなり、正幸を通じて朔郎への新しい発見もあった。

 元来この二人は動の正幸に対して静の朔郎と云うように二人は際立っていた。成り立ちも真逆で文学志向が強かったのは正幸で、朔郎が感化されたらしい。だが大学受験を前にしてハッキリとした現実路線を採ったのが正幸だった。それに引き換え自然派の朔郎は単独行動で写真活動派だ。朔郎に乗り物での移動中に読書を勧めたのが正幸だ。正幸も朔郎を通じて山登りに興味を持った。

 このようにして陰と陽に開きが有る二人が、長い友情を続けられたのはお互いにない物を求めた結果だ。それに区切りを付けるべく行ったのが最後の穂高縦走だが、帰ってから朔郎は塞ぎ込むようになった。口数が少ないのはいつもどおりだがどこか違った。問い詰めても何も言ってくれなかった。今度ばかりは耐えられなく禁じられた行動を取り、朔郎とは連絡のないまま、別々の道を十数年も遠ざかっていた。どちらかと云うと、連絡先を伝えないのは私より正幸の方では、と云う気がしてならない。 

 佐恵子は幼い時に父に連れられて近くの川へ遊びに行った。そこで自分の不注意で足を怪我した。大声で泣く佐恵子に父は「不可抗力なら仕方がないが不注意なら泣くな」と厳しい顔で父に叱られた。痛みより父の厳しさに声が出なくなった。父はすぐに優しく私を抱きかかえて夕暮れの家路を背中におぶってくれた。父の温もりを一杯に感じて染まる夕陽の朱までが暖かく思えた。あの時に感じた幸せを朔郎に求めた結果、私は何をしていたのだろう。正幸から何を得られたのだろう。

 今日も佐恵子は気が晴れないままに、北山のブティックに辿り着いた。


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