朔郎と正幸の再会2
「せっかく来てくれたんだ。ゆっくり見ていってくれ」
少し頰は緩んだがやはり眉に少し堅さを残したまま、要するにぎこちない物言いだった。
「時間はいいのか」
「それは俺が決めるんだ。それに賃貸契約では今日一杯まで大丈夫だ」
「そうか、大学での噂では本当は四回生の時に個展を開くつもりだったんだなあ」
そう云いながら展示してある写真を見回り始めた。朔郎も後ろから付いて行った。彼の求めに応じて作品の日時や場所や撮影に関しての苦労話も付け加え、説明をして行く内に冗談のひと言も挟める様になって来た。そもそも正幸が来た目的は別に有ったのは分かり切っていた。いつ彼女の話にすなわち本題に入れるのか二人は測っているように、きっかけを掴むタイミングを気持ちの成り行きの中で見ていた。
遠からず相手もそのつもりでいるのも判りながら、作品の話から逸れないままにとうとう一回りして、二人は元の受け付けのパイプ椅子に座った。
対面しても言い出す切っ掛けが掴めなかった。それほど二人にはあの最後の登山が重くのしかかっていた。正幸は座るとすぐに煙草を吸い始めた。
「いつから吸ってるんだ」
「この仕事を始めてからかなあ、まあ商談でこじれそうになるとなあ。北村お前は吸わなくなったのか」
「ああ最近辞めた」
「良いことだ。俺は段々増えて仕舞った」
「仕事でか」
「なら問題はないが、いや問題かも知れんが、俺はいったい何を言ってんだろう」
正幸は苦笑いを浮かべた。それで吹っ切れたのか本題に入った。
「とにかく家の中で急にざわざわしてきて、もう俺がここへ寄った理由を知ってるんだろう」
「何の話だ」
「そうきたか、佐恵子が最近塞ぎ込む様になったんだ」
「彼女が喋らなくなったか」
「そうじゃない。相変わらず冗談も言うし愛嬌も有る」
「じゃあ昔のままじゃないか」
あの時の再現のように、朔郎には佐恵子が脳裏に焼きついて来た。




