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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の帰り1

 陽が落ちると裏通りは人気ひとけも消えて鴨川の河原を吹く風が肌にいやでも秋を知らせた。 

 この日は展示時間が終了すると、狭山と北村は堀川を先に帰らせて一緒に先斗町ぽんとへ出掛けた。居酒屋風で落ち着いた品の良い店を見つけてそこで二人は酒を呑んだ。

わざわざ帰りの電車を気にしながら呑むより大阪で飲んだらと云う堀川の提案には「ネオンが浮かぶ道頓堀と提灯が揺れる鴨川では風情ふぜいが違う。第一、ビル街の上も下も車が行き交う道路を眺められるか」と言って居残った。

 店は狭い間口だが奥行きがあった。長いカウンターと通路を挟んで衝立越しに座敷席があった。端の座敷席に座った。

 狭山はビールで疲れを癒やすと、とにかく早く家庭を持てと堀川を散々に称賛した。それから本題に入った。

「なあ北村、今日は佐恵子さんを前にして駄洒落交じりに色々と昔の話をしてくれたが、お前は水臭いぞ。お前は籍はまだだったが共に新婚時代を家族ぐるみの付き合いをしたんじゃなかったのか、あの当時は正幸と云う男なんか一度も聴いた事がなかったぞ」

 あの頃お前たち夫婦は、肝心なことは何も話してくれなかったと狭山はぼやいた。

「ところで正幸か、苗字みょうじはなんて言ったっけ」

「篠原」

「しのはらか、彼女が北村から篠原にどうして変わったんだ、さっきの話では分からん。はっきり説明しろ」

「俺も彼女が正幸の所へ行くとは思わなかった。いや思いたくなかったと云うのが正直なところだ」

 大学へ入ると同時に彼女を知った。お陰で勉強どころじゃなかった。大学は中退せざるを得なかった。彼女は俺を愛すると同時に、俺を何処に出しても恥ずかしくない人間にしょうとした。彼女は俺に自信を持たすために人のやらない世界へ飛び込む事を勧めて俺は船に乗った。


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