友美と祐次1
あんなウジウジしてはっきりしない姉さんなんて今まで見た事ない、と友美は早足で松田裕次の待つ喫茶店へ飛び込んだ。
意外と松田は待ちくたびれてなかった。訳はすぐに判った。彼の席にはもう一つのコーヒーカップと水の入ったコップが置かれて、友美は向かいの席に座るのを止めて松田の隣に座った。
「誰かと一緒なの?」
友美は怪訝な顔付きで聴いて来た。
「ああ、君と待ち合わせを約束していると言ったら、どうしても君に会いたいと云う人がいてね」
「誰?」
いやに神妙な言い回しに友美は小首をかしげた。
「トモちゃんの良く知ってる人さ」
「ねえ誰、人の恋路をじゃまする奴はだれなの」
「ホウ、恋人と認めてくれたの」
うぬぼれるなと友美は松田のコメカメを突いた。彼は突かれてもニンマリとしていた。
「さあ誰でしょう ? 当てたら今日の夕食おごるよ」
「高くつくわよー」
「ああいいよ」
手洗いからこちらの席に真っ直ぐ来る男がいた。正幸であった。
「お義兄さん!」
さっき姉と別れたばかりの友美には意外だった。松田の上司でも有り、意外でもないかも知れない。それにしてもこんな所で会うなんて……。
「答える前に来たんだから賭けは成立しないよ」
友美にはそれどころじゃない。
「何を賭けていたんだ」
正幸は二人を見比べて、どうせろくな物じゃないだろうと云う顔をして煙草に火を付け、深い吐息と共に煙を漂わせた。




