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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の開催5

「下弦に冴える月かしら、あの頃のあなたならその前の作品に目を止めたけれど、今はあの作品が素敵だと思えるようになったのはなぜなのかしら?」

「それだけ年季が入ったって云う事じゃないだろうか」

 やっと朔郎が真面まともに佐恵子に語り出した。

「まあ ! 年季だなんて、もっとマシな言い方ないのかしら?」

 でもあなたらしいと佐恵子はしとやかに笑った。

 正幸の事は当たり障りのないように避けながら二人は昔のように話した。狭山と友美は完全に脇役になった。

 これで北村も次回は昔のように佐恵子と本音で語ると狭山は確信した。

 喫茶店を出ると北村と狭山は個展の会場へ戻った。二人と別れた姉妹は通りを歩き出すと堰を切ったように友美が佐恵子に話し出した。

「ただの友達じゃないんでしょう、さっきの人、義兄さんの事をよく知っていたわよ。どういう人なの」

 高校まで熊本に居た妹は正幸と一緒に成る以前の事は知らない。まして佐恵子の事で義兄の友情がどうのこうのと言われても解らない。

 あの時は正幸のお節介で一度崩れかけた仲を有美子が取り持ってその場はしのいだ。佐恵子も朔郎と心機一転で大阪に移り住んだ。一度ひびの入った心の亀裂も表面では順調に修復した。だが数ヶ月後にあるひと言で瓦解した。

「何を言われたの」

「二人で登山に行って帰ってから朔郎の様子が可怪おかしく成ったのよ、何度聞いても答えてくれないから正幸に聴いて驚いて家を飛び出したの」

 と言いながらも淡々として、今の姉の顔には何の変化も感じられなかった。

「また有美子さんところへ行ったの?」

「もう行けないから今度は正幸に確認したの」

 友美にはじれったいが、理由は凛と張った目許でやはり訊きそびれた。

「それで」

「その時に正幸は半年間の海外研修が決まったの。ひと月後にあたしも追っかけたの」

 どうしてと云う肝心な途中が抜けている。が厳しい姉の表情に友美は訊ねるのを躊躇ちゅうちょした。


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