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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の開催4

 佐恵子は奥のテーブル席にいる朔郎さくろうが目にとまり、どう云うことと狭山を呼び止めた。

「佐恵子さん、彼はぼくに間に入ってくれと言われましてね……」

 朔郎は近くで待機していたのね、と狭山の言わんとしたことをその誤魔化し笑いで佐恵子はすぐに理解して席に座った。

「佐恵子さん本当に久し振りですね。どうしているかと北村も心配してましたよ」

 朔郎の横に座った狭山が先ほどとは打って変わって昔のように親しみを込めて言い出した。後の言葉は友美以外は見え見えで、実に余分だが彼が言うと自然体で通った。

 佐恵子は狭山の言葉を受け流して、改めて妹に朔郎を大学時代の友人として紹介した。

 友美は五人兄弟の末っ子で切れ長な眼は姉に似ていたが現代っ子で物事に余り拘りがなかった。

 営業担当の狭山は面白可笑しく会社や仕事場で世間話を振りまいた。彼は実にこの場の雰囲気を盛り上げていた。朔郎と佐恵子はそれに会わせて相槌を打ったりして話を繋いでいた。それでもまだ上手く話に乗れない北村は、何とか此の場で切っ掛けを掴もうとしても駄洒落しか出来なかった。狭山と佐恵子はその都度しらけるが免疫のない友美は笑い転げていた。

 佐恵子は妹に「笑っちゃダメ、この人、癖になるから」と自制を促すが、友美は「だって涙が出るほど可笑しい」と目頭を拭いていた。北村の駄洒落に飽きた佐恵子と狭山は二人だけで話した。もて余した朔郎は友美と二人で喋っていた。

 当事者同士は聴きたいことは山ほどあるが、部外者の居る手前では当たり差し障りのない話に尽きた。この前も北村は佐恵子と会っていたが肝心な事は何も話していない。おそらく堅物なあいつはまた同じ事を繰り返すと思って、狭山の演出でざっくばらんな雰囲気に持って行ったところで朔郎も気持ちを落ち着けた。

 その雰囲気に乗って正幸まさゆきは相変わらずだと佐恵子が切り出すと朔郎の表情が硬くなった。まずいと佐恵子は直ぐに話題を変えた。

「さっき、あなたの写真展を観たわよ、他にも感心して見ている人もいたわよ、おめでとう」

「ほ~お、それでどの作品が気に入りましたか」

 二ヶ月前に再会しているのにどうした北村、と、硬直した朔郎に代わって狭山が話を繋いだ。


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