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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の開催3

「お姉ちゃんあの人だれなの?」

「ここで写真展を開いた人のお友達で、昔は数ヶ月だけど一緒に家族同士で付き合いをしていた人」

 ふーんと友美は関心なさそうに展示作品を見回し出した。

 そこにはひと組の白髪交じりの夫婦連れが揃って丹念に作品を見ていた。女は染めているのか黒髪だった。男はカメラ好きなのか作品を指しながら説明していた。女は笑顔を絶やさず耳を傾けて頷いている。

 この初老の夫婦を見て佐恵子は堪らなく寂しさを覚えた。今の正幸には無い人生の幸福感を魅せられた。あの初老の夫婦の半分以上も生きているのに ……。

 佐恵子はうつむき加減に夫婦の後ろを足早に過ぎた。

 やはり会わない方が良かったかと思うと早く出たくなり妹を捜した。

 友美は関心が有るのか喰いように見て回っていた。

友美が立ち止まっていたのは暮れ掛かる穂高が赤く染まった写真だった。その横には下弦の月明かりに照らされて闇夜に白く浮かぶ穂高の写真が対比されていた。それぞれに陽の穂高と陰の穂高のタイトルが付いていた。

 それは風景写真と云うより人間の表裏を対比させているようなタイトルで可怪おかしいと友美に言われた。

 確か昔に朔郎がセレクトした時は月明かりの方は「下弦に冴える穂高」にしていたと思った。それが二転三転してこのタイトルに落ち着いたらしい。友美の言うように眺めると、あの時と違ってひょっとしてこの写真は正幸と朔郎を対比させているんだろうか。そう思うと更にここを飛び出したくなった。見渡せば先を行く友美はまだ回覧していた。仕方なく佐恵子は手持ち無沙汰に付いて回りようやく受付に戻った。狭山は接客を切り上げ、受け付けを堀川に任せて行く手を遮るように佐恵子の所へ来た。

「久し振りですから良かったら近くの喫茶店でコーヒーでもどうですか?」

 来店時の狭山の態度からして、説教じみたお話ではと佐恵子は疑った。

 驚く佐恵子に、家に帰って心配している多恵に、貴方の近況を聴かせたいと狭山は更に付け加えた。

 佐恵子は狭山の熱意に合わせて失礼の無いにように一寸間を空けて辞退した。ゆっくり観ていた友美にすれば、かされて裕次に会うにはまだ時間が早すぎると言われてしまった。この日の同行はやっぱり有美子に頼むべきだったと後悔した。

 結局佐恵子は狭山に押し切られて誘いを受けて、彼の指定した三条小橋の喫茶店に入った。


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