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陰り逝く日々  作者: 和之
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佐恵子と有美子3

 そうか歳相応とは世間が決めるのでなく自分で決めて行けばいいんだ。

「あの写真を撮った人はどんな人なんですか?」

「寡黙な人です。ただ山や自然を語る時は熱っぽくて眼が輝いて来るんです」

「それで風景写真を撮ってらっしゃるのですか」

「ええ一人で行く時はそれが目的ですけれど友達と行く時はカメラは持って行かないんです」

「友人の場合は登ると云う目的に限定されるのですね」

 マスターに言われるとあの頃は正幸と一緒に登るのが楽しみだったのかも知れない。

 あの最後の暑い夏にも二人は信州へ行った。そんな好きな山でなぜあんな事があったのだろう。

 佐恵子の考える時間を遮る様に有美子はやって来た。唐突過ぎて気を悪くしていると思ったが有美子は意外にのんびりと店に現れ、コーヒーを頼み佐恵子の隣に座った。

「急に何の用なの」

 佐恵子は電話一本で来てくれる友の笑顔に心が洗われた。

「別に用と云うほどの用でもないの、ただ息抜きがしたかったの」

 佐恵子は食器棚の遙か向こうを見ていた。マスターは有美子の前にコーヒーを置くと席を外す様に流し台に移動した。

「ただの息抜きじゃないわね。正幸さんのことね」

 鋭い友の反応に洗われた心がズキンと痛む。

「そう勝手に決めつけないでよ」

「でもそうなんでしょう」

 はっきり違うとは言い切れないのは、やはり心のどこかに正幸に対する不信感が芽生えている。

「十四年目の浮気じゃないけれど、倦怠期じゃないの」

 倦怠期は余計だと佐恵子は口をとがらせた。

 佐恵子には朔郎との間に生まれたゆかりが居る。そして正幸はそれを承知で引き取ったが彼との間には子供は生まれなかった。そのせいかまともに夫婦が向かい合う事が多い。上手く行ってる時はいいけれど、一つでも噛み合わなくなるともろく成ると有美子は言った。ゆかりが夫婦の子供ならいいが、よりによって北村さんの子供では、正に壊れやすいガラス細工の家庭だった。

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