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陰り逝く日々  作者: 和之
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再会4

 ふたりは心斎橋から地下鉄御堂筋線に乗った。三つ目の駅が梅田である。結局ふたりは話らしい話も、約束もせず梅田で別れた。           

 朔郎は駅前の雑踏を抜けて御堂筋から東通り商店街を曲がり、中程にあるチェーン店の居酒屋に入った。時計は七時を少し回っていた。

 やばいなあと思いながら店員に案内された部屋に到着した。二十人でいっぱいになる小部屋の座敷の流しテーブルにはみんな揃って座っていた。一番奥の上座だけが空いていた。

 みんなは彼を見るなり拍手や野次を送り奥の空席を示した。一番に会社を出た人間が一番後に来るなんてと言われながら上座に着いた。

 何処へ行っていたのですか。随分遠回りして来たなあ。どっか寄り道でもして来たんか。と彼が一番奥の席に着くまで上司や同僚、後輩の野次と果ては女子事務員のひそひそ声までも鳴り止まなかった。

 彼が着席して上司の一声でやっと静まり返った。おっせいかいな同僚が僭越せんえつながらと司会の様な役どころを勝手に願い出て彼の送別会が始まった。

 さっそく司会から指名された上司は北村朔郎との関わりと、形ばかりの贈る言葉をもったいぶって演説していた。

 退屈な朔郎は神妙な格好で聴き入る会社の連中を眺め回した。同期入社で一番仲のよい狭山さやまと目線が合った。 

 狭山は愛嬌たっぷりに眼だけで何かを言っているようだった。朔郎も色々と仕草を変えながら相手をしていた。みんなは見て見ない振りをしていた。知らないのは立って挨拶している上司だけだ。

 端にいる堀川ほりかわ綾子あやこだけは二人のやり取りに込み上げる笑いをこらえながら見ていた。それに気が付いた朔郎が彼女にもシグナルを送ったところで上司の挨拶が終わり乾杯となった。

 ビールの栓があちこちで抜かれ、コップに注ぎ合って乾杯となり、後は各自バラバラに雑談が始まった。

 朔郎は綾子を見ながら「あの子は色々と世話を焼いてくれたがいまいちかなぁ」と呟きながらビールを空けた。待っていましたとばかりに新人で隣にやって来た片山がビールを注いだ。

「北村さんどうするんですか」

「片山は幾つだったっけ?」

「二十一です」

「二十一か、若いなあ、羨ましい。俺は丁度お前の歳に一度結婚したんだよなあ」

「話によりますと十何年前に離婚されて今も独身だそうですね」

「十四年前だよ」

 俺はその女とさっき会ってたんだよなあ、と口の中で呟いた。そのあとビールを一気流し込むと心までも空虚になった。

「いい呑みっぷりですね」と言いかけた片山は、奥から同僚の女子社員の黄色い声に誘われて行ってしまった。



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