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陰り逝く日々  作者: 和之
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狭山の北山論2

 もう十四、五年になる。俺は大学からだがあいつは途中採用と云っても数日ぐらいだから二人とも新人で同期に違いない。募集人員より応募者がその年は少なかったのも幸いしたが。あいつは佐恵子さんが人事部に掛け合って採用されたのだ。だから当時は社内ではあいつ以外は知らないから休憩も食事も何をするにも一緒だった。気も合って退社後も二人でよく飲んで帰った。多恵と佐恵子さんが知り合ったのもそんな居酒屋だった。あいつは良く店の名を噂して、多恵も知っていたから遅くなった日に探しに来たらしい。そこで嫁同士二人が別々に迎えに来て気が合って四人でその日は飲んでしまった。それからだお互い家族同士で付き合う様になった。

「でも北村さんはすぐに離婚したって聞いたけれど……」

「大学時代から一緒だったらしいけど俺たちと付き合ってからだと四ヶ月ぐらいか。春から夏ぐらいだった。暑いさなかにはあいつはもう一人だった」

「離婚の原因はなんなのですか」

「詳しい事を言わんし、俺も聞かないから解らんなあ。……ああ想い出した離婚前に北村と気が合う男がひとり居た。そいつと穂高を縦走したらしいそれが唯一の変わった出来事だったなあ」

「それが原因ですか?」

「いや、解らない。本人が何も言わないから。いや言いたく無いのだろう」

「そうなの。肝心な事なのに狭山さんにも言わないなんてどうかしてるわ」

  言ったところでどうにもならないのだろうと狭山は笑った。

「肝心な事だから言わないんだよ。あいつはそう云う男だ。自分以外は心を明かさない、いや佐恵子さんだけは違った。特別な人らしかった。だが今回はその人が問題だったから誰にも言えんわなあ」

「じゃあ佐恵子さんって云う人はどんな人なんですか?」

「まあ、あいつにはもったいない女だったなあ」

「もったいない、て言う事は素敵な人だったんですか」

「なんせ学生時代は男達に結構言い寄られたと云う話を北村はしていたが。そんなひとが北村に言い寄るはずがないとまあ眉唾もんだと相手にしなかったんだ」

「どうしてですか」

 二か月前までは同調した綾子だったがこの日は珍しく剥きになった。

「どうしてって、大学では一番話しにくいだんまりやの北村に女の方から誰が誘うと思いきや、我らの源氏物語の玉鬘さんは選りに選って北村に声を掛けた。これはあの大学では七不思議のひとつに入ってるらしい」


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