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陰り逝く日々  作者: 和之
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狭山の北山論1

 狭山は営業報告や得意先の支払い報告でよく経理に寄っていた。経理には三人の女子事務員が居てその内の一人が綾子だった。

 帰りの遅い狭山は経理への報告や伝票の依頼は翌朝になることが多かった。ふたりの仲を知ってからは時間に間に合えば綾子のところへ寄った。

「何だ堀川、君まだ頑張ってんのか」

 言ってから狭山は時計を見た。

「ええ、でももう帰ります」

「じゃちょっと付き合わないか」

 綾子は北村の事だとすぐにひらめいた。二人は一度ゆっくりと話したいと願っていたから社外であう約束をした。

 狭山と綾子は御堂筋から一筋離れた横道にある喫茶店に入った。此の店は心斎橋のビル街からの通勤途上から外れて、人通りの少ない落ち着いた古風な店だった。

 カウンターには常連らしい年配の客がおり、通路を挟んでテーブル席が並んでいた。二人は奥のテーブルに座った。

 狭山はコーヒーを頼むと、この前は驚いたと話を切りだした。あの日は君が来る直前に北村の口から佐恵子とは正反対の性格である綾子の話が出て、付き合ってるのか半信半疑だった。しかしその後に堀川が来たのでピンと来た。

「あの日は逢い引きだったのか」

 古い言葉でその場をほぐすと狭山は堀川の返事を待たずに「これであいつも落ち着いた家庭が持てそうだから良い」と納得していた。

「あそこに狭山さんが居るなんて思わなかったわ」

 綾子にはセルフスタイルのコーヒ店が意外だった。

「彼奴から何も聞いていなかったが、あいつは口下手だからそう云う方法を取ったと思ったが。まあ偶然にないにしろ彼奴が誘うのは珍しい。あんな感じで北山とは会社近くの茶店でよく会っていただけにあいつには手頃な場所で、却って手間が省けて都合良かったんじゃないのか」

「狭山さんの仰るとおりですけど」 

 綾子には狭山はただの同僚だと思っていたから驚いた。

「そう云えば入社日が同じなんですね」


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