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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の復活6

「あの夕陽のシルエットに浮かぶ山の写真は大衆受けする写真ですね。次の角度を変えたコマには山と天空に昇る下弦の月がうっすらと写ってましたね。確かに夕映えの中では目立ちませんがじっくり見ると目立って来ますね。あれは淋しいからはねたんですね。でも集大成をお望みでしたら加えられれば、この前後の二つの作品を引き立たせるには意味のある写真だと思いますよ。そのあと同じ場所で撮った月明かりの山岳写真。私はあの写真が好きですね。確かあれは『下弦に冴える月』とか云うタイトルでしたね。是非内のギャラリーをお使いいただいた暁にはあの写真を飾って欲しいですなあ」 

 貸し画廊のオーナーはあの写真の後に訪れる自然の厳しさを予兆してくれていた。それが朔郎には嬉しかった。佐恵子は中途半端で邪魔な月ねーと透かし模様みたいな月をそう言っていたっけ。

 開催の一歩手前までいったあの頃をオーナーは懐かしく、そして残念そうに語っていた。あの写真だけはオーナーが所望して贈呈した。

「あの写真はどうしました?」

「いやー、私の知人で喫茶店の店主がおりましてそこで飾ってます」

  大事に額に入れて有りますから色褪せてないそうだ。

 そこまでオーナーと気が合うと、後は今度開く個展の日取りだけだった。

 此の男の行動は不可解だ。昨日は綾子と個展に出す作品が揃わないともめていたのに。それでも何の動揺もなくぶらっとこの日は画廊探しに出掛けていた。

 用件が済むと知らぬ間に北山行きの地下鉄に乗っていた。北山駅を降りて彼は佐恵子の店の前を何度かやり過ごした。結局重い足取りのまま夕方にはアパートへ帰ってきた。その後すぐに綾子に電話した。

 電話を切って窓を開けて見た。昼間はまだ暑さが残っていても陽が沈む前は、こんなにも爽やかな風が吹いているのに気づかなかった。晴れ渡った青空に幾つかの筋雲を見つけた。 

 遠くに見える生駒の山並みに眼を凝らし秋を探した。暑さの峠を越えると季節は次第に山の頂から色彩を帯びて来る。心なしか気分が少し和らいだ。


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