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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の復活5

 作品を見て佐恵子が的確に思うものを指摘して決めていた。それに対して助言のない綾子に説明するのが面倒臭くなった。

「ただ被写体に向けてシャッターを押しただけさ」

 此の理屈に彼女は怒りを通り越してしまった。

「その時に何か閃いたからでしょう!」

 この人は何の為に個展を開くのかしら最初はあれほど輝かせていたものが具体化すると発起から主張が逸れて行くのは何なの。

「じゃああたしが選んだ作品を参考にして此のアイコンの中から選んで決まったら教えて頂戴 !」

 煮え切らない朔郎の態度に時間の無駄と言わんばかりに綾子は帰った。

 綾子を送り出して部屋に戻ると、出展する写真の整理を再び始めた。昔に佐恵子と選んだ作品の数々で大半を占めていた。俺はあれから大したものを撮ってないのか。一枚一枚の作品を見るとあの頃の二人の思い出が作品の中から滲み出して来た。今度の個展には綾子も協力してくれるだろう。となるとやはりこの十四年間で撮った作品から捜そう。もう一度作品を取り出して検討してみるが佐恵子の影が付きまとった。まずは会場の規模に合わす必要が有ると、彼は作品の数を絞りきれないままギャラリーを探しに出た。 

私鉄電車に揺られながら桂川を渡ると地下に入る辺りから風景は途切れてしまった。そこからは窓ガラスに映る自分の顔と睨めっこすると余計な雑念がまとわり付いた。

 あれだけ親身になって綾子が作品の選り分けに協力してくれたのに。まるでちゃぶ台返しの様に急にほったらかして、いったい何が気に入らないんだ。電車は答えの出ないまま着いてしまった。そのまま想い出の街へ投げ出された。

 まずは昔に借りる予定だったギャラリーを訪ねた。オーナーは北村を覚えていた。

「いやあ、あの暮れかかる山岳写真は胸にジーンと来ましたね、だってあのワンシャッターの為にあとはその闇夜の稜線で一人で野宿されたんでしょう」

 確かにあそこは狭くてテントを張るスペースはなかった。撮り終えると陽は落ちて闇に包まれて一歩も動けなかった。幸いに月が出て来た。満月にはほど遠い下弦の月だった。しかし漆喰の闇にはそれで十分な灯りだった。朔郎はその灯りでリュックサックの位置が分かり、取り出せた寝袋に身を寄せることが出来た。あの月光に救われた。あれが新月なら寒さで一睡も出来なかったかも知れない。だがらそれだけの価値のある写真が出来上がっていた。


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