個展の復活4
朔郎は決心しても腰が重くて行動が伴わない。見兼ねた綾子は業を煮やして次の日曜日には早速、彼のアパートに乗り込んで来た。
「さあ作品を選定しましょう」
綾子は撮りためた写真の所在がデスクトップパソコンの中に集約されていると知ると早速パソコンを起動した。その横で朔郎が入れた紅茶を机の脇に置いた。
綾子が画面とにらめっこして「これいいわねぇ」と朔郎の同意を取り付けては新設のアイコンの中に入れて行った。それを傍で朔郎がチェックする。本来の役割があべこべになって進行していた。
チェックした写真を何度もひっかえとっかえして見比べる、どうしても決められない物は予備の新設のアイコンに収まり会場の規模に応じて予備から取り出す事で片付いた。
かなりの写真がそのアイコンに収まった。そこから更に作品集作りに取りかかった。
「昔の写真の方が心がかき立てられるわね」
一区切り終わって綾子が言いだした。
個展は自分から言い出したが最近の作品に良いのがない。それで尻すぼみの様になりかけた。あれ以後の写真は作風が変わったからだ。佐恵子を失ってから自分の感性以外に雑念が生じて益々何かを求めて彷徨う作風になった。テーマが分散して作品の主張が貧弱に成りがちだった。それを朔郎が悲観して出品を躊躇しだした。
「時代と共に作風は変わったとしても誰に悲観するんです。合わないんなら昔の作品でなくてもいいでしょう」
と綾子が咎める。
あの女の事で益々意固地になりかけたときの作品なんて……。しかしその為に主義主張が怨念のように作品の中に織り込められて他を圧倒させていた。
「でもそんな写真は受けいられるだろうか?」
「あなたが撮った写真よ。何でそんなに作風に拘るの」
「時代も進むから写真もそれに合わせる必要があるんじゃないの」
「それは世間が決めるのではなくて北村さんが決めるのでしょう」
「厳密には万人の心を掴める物がベストだけど、それをこの段階で特定の人間だけで選んでもどうかなあ」
この人は何なの。屁理屈を並べだして、一向に作品を決めようとしなくなった。
「あなたが撮った作品でしょう。あなたの個展なのよ。だからあなたの感性で決めるべきでしょう」
子供みたいにぐずる朔郎に綾子は念を押させた。




