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陰り逝く日々  作者: 和之
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個展の復活3

 無気力なのか思いやりが有るのか解らない女だ。佐恵子なら「どうしてなの」と思い留まらずに納得するまで聞いて「じゃこうすれば」とアドバイスまでする。俺は作品以外は何も考えなくて付いて行けば良かったが。ここでは自分でやるしかないか。

「今の話で考えたんだけど」

「何を?」

「個展を開くことにした」

「何処で?」

「京都で俺の作品の写真展を開く事にした」

「大阪じゃダメなの」

「最初の計画通りやりたいんだ」

「昔に幻で終わった計画を実現したいのね」

 ホーと無関心を装うにも良し悪しはあるが、今回は功を奏してやっと引き戻せたかと綾子は安堵した。

 仕事も無く退職金と失業保険だけで流浪るろうの生活をする朔郎に、一筋の光明を与えるべく綾子は推奨した。朔郎もあの当時と違って今は退職金と云う資金もあった。  

 朔郎は頬を緩めて思いきり頷いた。その顔で綾子は仕事はともかくやっとこの人も前向きになってくれたと思った。

外へ出ると夕陽はすでに落ちて足下は暗く、九月も終わる頃には気候も過ごしやすくなっていた。昼間あれほど暑くても陽が落ちると心地良い風が頬を射してゆく。季節の節目を迎えようとしていた。

「やっと涼しくなったわねえ。これであの暑さから解放されたのに春のように節分とかお水取りとかの行事が、どうして夏の暑さからやっとひと息つけるのにないんでしょうね」

「どっちも待ちどおしいが、一年の節目とその途中では期待感が違うだろう」

 ひと息付くのがやっとでは、とてもそれを祝う気分になれない。そこが春とは違う雰囲気だ。レースに例えるなら息も絶え絶えにゴールする秋分と颯爽とスタートする春分の違いだろうか。旅立ちは祝うが到着はこっそりと疲れた躰を癒やすだけだ。

「寒さから解放されるときは命の芽吹きを感じられるからさ。眠り付いた枯れ野から花や葉が咲き出すだろう」

 綾子にそう云いながら彼に生命の息吹きが有っただろうか。いて思うなら佐恵子との恋か。芽吹く前に散った恋が、あれが息吹きと言えるのだろうか。もうそんな時代は過ぎて付録の人生しか残ってないのか。そんな人生をまっとうするより、これで前向きにしなければならない。今度の個展がその集大成にしたい。

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