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陰り逝く日々  作者: 和之
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回想12

 忘れもしないあの日、朔郎の留守中にも関わらず佐恵子が正幸と一緒に実家を訪ねた。そこで正幸が友人の為に両親を懸命に説得する姿を知って朔郎は痛し痒しだが。これはあくまでのふたりの問題で正幸の介入は論外で本質は佐恵子に有った。だから正幸と話しても彼女が確たる意志を持ち続ければ問題はない。朔郎はその原点に立ち返って佐恵子と向き合う事にした。

 正幸に不満をぶっつけて佐恵子への気持ちが落ち着くと、まず彼女が同居する有美子の自宅へ向かった。気が動転するほど朔郎に初めて罵倒された佐恵子も、有美子に説得されて冷静に考え直したのか、彼女も落ち着きを取り戻していた。そこで有美子の仲立ちでふたりは向かい合った。

「正幸さんとあなたってどれ位のお友達なの?」

 性格が似ているから友達になれるが、どう見ても二人はあまり似ていない。どう違うのか面と向かって最初に佐恵子が聴いて来た。

 社会と隔離された校舎での高校生時代は行き場が無かった。みんなと合わせるのがつらくて、一番気が合った正幸の苦手な欠点をカバーして、引き換えに彼のクラスでの好感度を利用した。

 大学では自由な雰囲気から無理にみんなと合わす必要が無かった。同じ自然派の正幸なら一番気心が知れる様になって、彼とは夏や冬の休みには良く旅行をした。特に彼との冬山は絶妙の信頼関係で成り立っていて、目的と行動が完全に一致していた

「そんな風には見えないけど……」

 俯瞰して見る有美子は否定的だ。

「そりゃ普段は別もんだ、山の上という何もない自然環境だから成り立つ共存精神なんだ、だから都会では成立しない」

 厳しい自然環境だからこそ手をこまねいて見過ごす訳にはいかなかった。自然の驚異の前では見知らぬ者同士でも居合わせば連帯感も生まれる。

「じゃあ正幸さんが言っていた、あなたが冬山の稜線から雪に取られて落ちかけて所を彼に救われたのは本当なのね」

 朔郎はふてくされながらも山男同士の友情を認めた。

「そうなの。何だか厄介なお友達なのね」

 とてもあたしや有美子とは違う異質の友情と言えるものなのかしらと佐恵子と有美子は顔を見合わした。

 異質じゃない、着飾った女どもには解らない山男同志の本質だ。普段はクールに装っても登山者は、自然相手には利害関係を越えて結束出来る。


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