回想2
ふたりは大学を出て通りに沿って歩いた。小さい小川に出ると今度は土手に沿って歩いた。確かに土手に桜の木は並んでいたが花は半分散っていた。風が吹くたびに花びらが舞っていた。
こないだまで満開だったのに早いものねと彼女は言った。だが花が散り始めた事を惜しみながらも 口調は軽やかだった。
朔郎が物の弾みで花言葉を語るとそれには賛同したが、占いや性格判断に及ぶと「わたし、その様なものは一切信じないんです」ときっぱりと否定した。
そのようなものに自分の人生を左右されたくない。一見すると着物が似合いそうな古風な容姿だったが 、運命は自分で切り開くものであると云うのが彼女の持論だ。 その為に日頃から自分の知性と感性を磨く事に日夜努力するものだとも言った。
「あなたにはその素質があると思うの」
「何の素質ですか」
「今日初めて親しく話したのですからそんなこと知りません」
彼女の口調は強かったが目は笑っていた。
話題はお互いの身の上話に代わった。
朔郎は地元で親の家から通っていた。だが学費と生活費はバイトで賄っていた。それには彼女も感心した。
佐恵子は熊本出身で今は下宿している。ここの下宿屋のおばさんが気さくで物わかりが良くて、時々話し込んでしまいそれで試験前になると困ると笑いながら語った。
桜並木はとうに過ぎて静かな住宅街を抜けて、頻繁に車と人が行き交う通りに出てしまった。結局ふたりは一キロほど歩いて互いに良い印象を残してその日は別れた。
それからはどちらともなく誘い合ってふたりは良く出掛けた。
佐恵子はふた月もすると朔郎は思った通りの人だと確信するようになった。
思い込みと云うものは目に見える所を美化して、見えない所は心の中で飾りたてた。
ふたりの仲が更に発展すれば良くないところは見過ごさずに良くしたい、いや自分の手で磨き上げたいと佐恵子は思うようになった。
あの人の今は解らないが、その何かに向かって生きている。それが何なのか探し出して道しるべを示してあげたい。その為には佐恵子自信なにをすべきか迷っていた。




