表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰り逝く日々  作者: 和之
17/23

決められぬ就活5

 電車は大きな音を軋ませて淀屋橋に着いた。綾子は前のシート座席に居た二人の男を見比べながら「どっちもどっちね」と降りた。

 時計は約束の刻限を過ぎていた。だが綾子は急ぐでもなく重くもない足取りで改札を抜けた。

 昼光色に照らされた通路をゆっくりと出口に向かった。ぽっかりと空いた階段の上がり口の向こうに真っ暗な夜空が見えた。それは地下通路の明るさを吸い込んだ闇のように見えた。一歩、御堂筋に出ると外は車のライトと 店の照明ライトが洪水となって溢れていた。大阪の繁華街、キタとミナミを結ぶ中心部の証しだった。

 綾子は土佐堀川に掛かる淀屋橋を渡った。

 朔郎は一度振り返って彼女を確かめた。しかし傍に来るまで袂の欄干に肘をついたまま川面を眺めていた。

 二ヶ月前は綾子を見つけるとすぐに手を振って、目の前に来るまで見守っていた。それが今では来るのを知っていながら声を掛けてくれるまで気付かない素振りをする。慣れと照れ臭いのが染み込んでしまった。

「何を見てんの」

 綾子も隣に立った。

「別に……」

 川面を眺めたまま答えた。

「何が別になの。すぐに来て欲しいかったようだけど、そうでもないようね」

 切羽詰まった声で呼び出しておきながら、あまりにも素っ気ない返事に綾子は眉間を寄せた。がこの人はいつもこうなのだと自分に言い聞かせた。

 彼女の沈黙に背筋に冷たい物を感じて、朔郎は振り返ってようやく綾子を見た。

 この人の気まぐれを、綾子は二年以上も見て来た。付き合ったのは二ヶ月だが、これが長いのか短いのか分からない。裕子は長すぎると言ったが……。

「ちょっと歩こう」

 この人のちょっとはくせ者である。黙っていると何処まで歩くか分からない。それでも綾子は朔郎と並んで中之島公園に向かって歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ