表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰り逝く日々  作者: 和之
PR
130/140

一方で朔郎は2

「かおりが具合悪くて入院してるんだ」

 綾子の沈痛な表情を沈めるためには、これしかないと彼は慌てて付け足した。綾子の顔には躊躇ためらいながらも微笑みが戻った。

「じゃあ、あの女だけの個人的な用向きじゃあなかったのね」

 綾子の知らない世界だけに、確かめようがないから気休めだった。

「でも綾ちゃんは会ったんだねえ。狭山から聞いた」

 矛先を変えられたが、娘には会ったと言うより、チラッと眺めただけだから、眉を寄せながらも聞き流した。

「二人は同期で気が合うのね。その狭山さんも多恵さんも昔の事は何も言ってくれないのよ。口止めしているの」

「してないよ。もうすぐ一緒に暮らすんだから何もかも言うよ」

 何が知りたいんだと朔郎は催促した。

 彼がここまで断言するのは久しくなかった。いや珍しかった。実に穏やかな顔から、今までにない彼の爽やかさが伝わって来ると、そこから過去との決別が綾子にはハッキリと読み取れた。

「どうして別れられたの?」

 それまで聞きそびれていたことを、今の彼の表情でハッキリと問えた。彼の顔からも別れた女の面影は消えていたが、違う愁いが彼の顔から浮かび上がった。

 それはもう随分と昔に、ある日から独りで実家を訪れるようになって、同じ質問を母がした。その時と同じ愁いが今の彼の表面を覆った。

 佐恵子と暮らしだすと、実家にはほとんど行く事がなかった。それで母はあんじょういってると思い込んでいたが、ある時からよく独りで帰るようになった。その時と同じ質問を綾子がした。あの時はこの質問で母が彼女の消息を尋ねたが、今の綾子の質問には彼女との絶縁を意味していた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ