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陰り逝く日々  作者: 和之
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正幸は家に引き戻される3

「この方が近道だから」

 と正幸の身体を思って友美の不安を払拭した。

 国道を外れると車は一台も走っていなかった。ヘッドライトで浮かび上がる道路以外は全くの闇の中を走っていた。

 オートマチックでない車はこの辺から裕次は盛んにギアチェンジを繰り返していた。直進でギアアップしてカーブの直前でギアダウンさせる。裕次はこのタイミングが実に上手かった。車は適度なエンジンブレーキがかかり、難なくエンジンの回転速度を落とさずに曲がりきって行く。こんな道が此の先には連続して続き、峠付近は更に厳しく曲がりくねった道になる。

「あのカーブでお義兄さん大丈夫かしら、あのまま真っ直ぐ行って国道一号線沿いに京都へ入った方が良いような気がするけど……」

「大丈夫さ、コーナリングには自信があるからさ」

「あなたの運転でなくお義兄さんよ」

「だから近道するんじゃないか。それにもう遅い」

 車は比叡山の峠道、山中越えに差し掛かっていた。いよいよ急な上り坂で今までより短い間隔で次々とカーブが目の前に迫った。

「裕次、もう一度電話してみる。あたし携帯を忘れたから裕次くん、あなたのを貸して」

 裕次は携帯をポケットから差し出した。

「病院から何度電話しても繋がらないなんて、お姉さん何処へ行ってんだろう」

 友美は裕次の携帯を開けて驚いた。

「馬鹿! 何これ? 電池が切れてる。どうすんのよ!」

「どっちみちこの山道は圏外だと思うけど。頂上付近の売店に有る駐車場に公衆電話が有ったなあ。そこでいいか?」

「いいわ」

 ぶっきら棒に友美は言った。

 閉まっている店の駐車場の公衆電話に横付けした。駐車場の周りは深い崖になっていた。一台も駐車している車もなく、下り坂の途中に有る公衆電話ボックスの灯り以外、辺りは真っ暗闇だった。

「怖いからあなたも一緒に来て」

 二人は車から降りて公衆電話に入った。友美はダイヤルを回して受話器を耳に当てていた。

「やはりいないのかしら」

「もう十一時を回ってるぜ」

「こんな時に何処へ行ったのかしら。まさか北村さんのところかしら?」

 友美は公衆電話の窓越しに坂道に駐めた車を見た。

「ねえ? 裕次、車が動いてるわ」


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